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夕方になっても雨はやまなかった。 友重のところから戻ったあと、佐緒は文を書いていたが、弥助の「譲右は夜には戻りなさるだろう」という言葉が少しだけ気にかかる。 やや不安げな佐緒を気遣かってか、みつのがいつもよりも明るい声で励ましてきた。 「今回のことは佐緒様があのお方を思ってされたこと、とみつのは承知しております。どんな時も私は佐緒様の味方。もしあの男が裏切るようなことをすれば、私と幸三郎様が探し出して罰を与えますから」 佐緒はその言葉に「そうね」とうなずくように笑みをこぼした。 その時、 「お嬢様」 と低く、しかし、しっかりとした声が聞こえた。 「譲右殿ですか」  佐緒の声とともにみつのが障子を開けると、正座して頭を下げている譲右がいた。 「昼は失礼をしました。ちょっとばかり、体慣らしに知り合いのところへ」 「何事もなくて安心しました。先生もそろそろ動き回ってもよいだろうとおっしゃっていました」 譲右が顔を上げると戻った時に弥助から聞いていたほど、佐緒の様子は怒っているようには見えない。みつのが譲右に中に入るように促す。譲右も素直にそれに従った。
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