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「このような下賤の者をお助けいただき、面倒をおかけしました。三年前のことを知っていて何故、お助けくださったんで? 諏訪の殿様は知っておられるんでしょうか」
どうしても聞いてみたかったことを譲右は思い切って聞いてみる。
「譲右殿の寿命ではなかったのでしょう」
と佐緒は笑った。譲右が不満げに
「答えになっていない」
とつぶやくと
「お上に届ければ、こちらは名を明かさねばなりませぬ。お見合いが嫌で仮病を使ってここにいるのですから、元気にしていることを人に知られては困るのです。それは友重殿も同じはず。お二人共、ご存知ですが幸三郎殿も誰にもお話しておりませんよ」
と佐緒は用意してあった答えのように、そして半分ふざけているかのように答えた。
「そりゃあそうだろうが…」
やや困った顔で譲右は肩透かしを食わされたことを、どう捉えればいいのか悩んでいるようだった。
「死んで自分の真実を全うできるのならば、その時に死ねばよいではありませんか。あの夜が譲右殿にとってその時、とは思えなかったのでございますよ」
真顔に戻ってそういった佐緒は、懐中から懐紙に包んだお守りを譲右の前へ差し出した。
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