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 翌朝、佐緒は差し込む陽の光で目覚めた。白く光る障子戸が眩しい。雨は止んで快晴だ。空の水色はすべての雲を刷毛で払い除けたかのように美しい。 今日はもう屋敷に戻らねばならなかった。見合いの顔合わせを引き伸ばしたところでどうにもならないことは最初からわかっていた。実際、当人が顔を合わせなくても話が進むことや、意志などどうでもいいことは既定のことだ。 (ただ、覚悟が必要だった) 佐緒は空を見つめ、思う。申し訳無さそうな気持ちを隠して、 「そなたの嫁ぎ先が決まった」 と自ら告げてくれた兄の言葉に今、逆らう気など毛頭ない。 「断ってもよいのですよ。私が何とか話をつけましょう」 と手を握りしめてくれた姉の心遣いをそのまま受け取れるような状況ではないことも承知している。それが今の自分に与えられた運命。 そして、ここで譲右と出会ったこともそうであろう、とみつのが言った、昨夜のことを振り返る。そこにどんな意味があったのか、それをみつのは知っていて言葉にしたのか、佐緒は知らない。そして今、それを知る必要はない、と思う。 真実の多くはあとになってわかる。その時に後悔することもあれば、あの時の選択は正しかったとホッとすることもあるだろう。その選択は運命に逆らうことか、従うことかは選べても、常に自分の選択は正しいと信じて生きていくしかない。
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