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後ろにみつのが来ていたことに気づいた佐緒は
「みつのは知っていたのですか」
と問いかけた。
「いいえ、気が付かず申し訳ありません。迂闊でございました」
みつのは頭を下げた。
それを聞いて、佐緒はさきほどの自分の不安を吹き飛ばすかのように、ふっ、ふっ、ふっ、と笑った。
「さすが、江戸市中で噂の盗賊ですね。みつのにも気づかせないとは!」
「行く先を探して、しばらく見張らせましょうか」
「いいえ、心配はないでしょう。もう会うことはないかもしれません」
佐緒は部屋から庭先へと目を移した。
朝日を受けて輝く花菖蒲と涼やかな音をたてている鹿威しが、佐緒の心を優しく包んでいくのだった。
終
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