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 謎の男はセレスティアルワンドをレゴリスの手に握らせると、射るような目を向けた。 「おい、か弱い女2人を守れない、もっとか弱い虫けら君よお。  何か、裏があるな。  このアレクシス・ブレイブハートに話してみな」  燃えるような蓬髪(ほうはつ)をなびかせ、獣のようにしなやかな体捌(たいさば)きでにじり寄ってくる。 「殺される ───」  遠くで伸びている2人の女戦士の方へ視線をやると、心細さが手足の力を奪い、腰が抜けて座り込んでしまった。  震える手で郵便カバンをゆっくりと開け、手を差し入れるが、他人の手のように硬直して震え、指が思うように物を(つか)んでくれなかった。 「今、アレクシス・ブレイブハートと ───」  かすれた声を絞り出し、涙ぐむ目で男を見上げる。 「ん、何か他にも ───」  カバンに手を無造作に差し入れた男は、一通の手紙を取り出して()まみ上げた。 「何だこりゃあ、字が書いてあるな。  お前、読んでみろ」  ふんと鼻を鳴らしてドカリと腰を下ろし、あぐらをかいて腕組みをして目を閉じた。  手紙の封を切ると、レゴラスは心を奮い立たせて読み始めた。  黙って聞いていた男は、大きく一つ(うなづ)き、レゴラスに手を差しだした。 「俺の名は、さっき言ったな。  ライオスのオヤジが言うんじゃあ、お前さんも選ばれた戦士ってわけだ。  何があるのか知らねえが、せいぜい死なねえように守ってやるぜ」  手紙を読み終えると、魔力の炎に包まれ(ちり)になって飛んでいった。 「一緒に来い。  足手まといだが、連れてってやるぜ」 「あの、どちらへ」 「決まってんだろうが、ロダニア山の向こうへ行って、ドラゴンの親玉をシメてやるのさ」  2人の女戦士は、ようやく気がついたのか身を起こし、こちらを見て後ずさりをした。  振り返ると遠くにテイシアの平原が広がっている。  これからどんな冒険が待ち受けているのか。  青く霞む山々は、試練の先にまた試練をもたらすのだろうか。  バイクにもたれかかっていた誠は、暖かい日差しを受けてぼんやりと薄目を開けた。  時々路地を通る車の音が通り過ぎ、(すずめ)の鳴き声が耳をくすぐる。  軽く目頭を押さえると、握っていた手紙の宛先を確かめる。 「山田 実様、と」  マンションの集合ポストへ手紙を次々に差し入れていく。 「しかし、変な夢を見たな ───」  手足に(うず)く痛みに(うめ)き、腰のあたりを(さす)って、またバイクにまたがった。  スロットルに手をかけた刹那(せつな)、手紙の宛名に視線を落として手を止めた。 「何だこれは、『レゴラス・グリーンリーフ様』だって ───」 了 この物語はフィクションです
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