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霞がかったような意識の中で、響いてくる言葉を聞いた。
「我が名は竜騎士バルドル。
久しぶりに会う、勇気ある者よ、我の元へ集え ───」
目を開けたが、真っ暗で何も見えなかった。
「うむ、『レゴラス・グリーンリーフ』よ、お前にはこの棒を授けよう」
頭に直接響くような、重々しい声と共に一本の古びた棒が右手に吸いつくように握りしめられた。
手紙と棒を力いっぱい身体に押しつけ、ゆっくりと回転する感覚に襲われ、流れに身を任せた ───
「あの、大丈夫ですか」
青臭い草と土のにおいを風が運び、鼻腔を突く。
太陽の温もりが身体を軽くし、視界を明るくした。
肩に手をかけた女が、力任せに引き起こしたのだ。
ゆっくりと瞼の隙間に光が差し込み、空の色を感じた。
唸るような声を出しながら、手にしっかり握っていた棒を杖代わりにして地面に突き、身を起こそうとした。
その時、草むらから巨大なイノシシが飛び出したかと思うと、猛然とこちらへ向かって突進してくる。
何が起こったのか判断する前に身体が動いた。
「フラーマ」
謎の言葉を吐いた女の声が、若いな、などと思いながら突き出された自分の手には汚い棒一本しかなく、武器としては心もとない。
次の瞬間、断末魔の悲鳴が耳をつんざき、黒焦げになったイノシシの巨体が地面に転がった。
口をポカンと半開きにしたまま、女の方へ視線を移すと黒い布に身を包んだ小柄な姿がイノシシに近づいて行った。
「何をしたんだ」
改めて見ると、体長3メートル以上はある巨大な黒い塊と周囲の草むらが、凄まじい炎で焼かれたのだと分かった。
「私の魔法だけでは、こんなにならないはずだけどな」
怪訝な顔を向けてきた女は、汚れた杖を凝視していた。
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