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6
テイシア城の最上階からは、遠くの山々が青く霞む。
人払いをした執務室には、2人の男が立っていた。
外を眺めていたのは白髪の老人だが、両眼には赤々と燃える光を湛え、ギラリと見据える威圧感は心の臓を鷲掴みにするような迫力だった。
「国王、ライオス様、例の手紙を、誠の心を持つ者へ、セレスティアルワンドと共に託しました」
「バルドルよ、アレクシス・ブレイブハートは、今どこにいるのだ。
やはり、ワシ自らが出向いた方が ───」
腰の宝剣を刷いた手を止め、柄にかけた。
かつて最強の勇者と呼ばれ、伝説の幻獣たちとも渡り合ったライオスならば、単独で出向いても良いのかも知れない。
実際、大型モンスターが闊歩するロダニア地方へ、ふらりと出掛けて行ってしまっていた。
ため息をつき、身を案ずるというよりも、いつもの決まり文句を抑揚なく繰り返すのだった。
「国王陛下が激戦区に出向けば、敵の的になりますぞ。
作戦遂行の妨げになるばかりか、軍の統制を乱しかねません」
今度はライオスがため息を吐いて肩をすくめた。
「アレクシスは良い戦士じゃ。
だが誤解をされやすい性格が禍して、単独で戦っておる。
『武』に純粋すぎるのだ ───」
物憂げな言葉とは裏腹に、口元には笑みを浮かべていた。
「さすがのワシも、そろそろお迎えがくる歳だ」
ふっと、目に湛えた怒気を消し、影が差した老王は椅子に腰かけるとバルドルにも勧めた。
「そんな弱気を仰っては ───」
テーブルに置かれた剣の宝玉には、燃えたぎる炎がゆらめいている。
火の属性を極め、最高レベルの魔力と俊足、そして膂力を持って振るえばたちまちすべてを灰燼に帰す。
この世で最も強い戦士は、魔法を極めた魔導師でも、肉体を極限まで鍛えた剣術士でもなく、魔力で鍛えた武器を携えた、すべてのバランスを体現した戦士なのである。
「アレクシスは、乱世そのものだ。
時代を駆け抜けるために生まれ、散っていくのではないかと心配でな ───」
「国王陛下、この地上には伝説の勇者ライオスに匹敵する者などおりません。
ですが、若い者たちの成長を信じてください」
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