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 テイシアを出てから、3人のパーティは(おそ)い掛かるモンスターを斬り、焼き、無傷でロダニアの森へ辿(たど)り着いていた。  腰のカバンに目をやると、手紙を渡す責務を果たすために、随分(ずいぶん)遠くまで来たものだとしみじみしていた。 「今度は大物だ、私が一太刀浴びせたら焼き殺せ」  アリアが自慢の足で敵の(ふところ)に飛び込み、リリスの魔法で畳みかける。  必勝パターンができ上っていた。  だが、想定外の展開が起こる。  背丈が人間の2倍ほどあるトロルは、手にした棍棒(こんぼう)で足元をガードして守勢一辺倒の作戦を取ってきたのだ。  勢い余って棍棒に剣を突き刺してしまったアリアが、宙高く放り投げられ、地面に叩きつけられ気絶した。 「アリア!」  レゴラスは駆け寄ろうとしたがトロルの棍棒の方が速い。 「フラーマ!」  渾身(こんしん)の力で火球を飛ばすが、それも棍棒で弾き飛ばす。  レゴラスは我を忘れ、セレスティアルワンドを投げつけようと振りかぶった。  その時 ───  全身が硬直して動けなくなった。 「よお、お前、その棒きれをどこで拾った。  てか、投げてどうすんだよ、バカかお前。  ほれ、ほれ、俺に貸してみろ。  てめえみたいなバカが握ってちゃあ、秘めた力を出す前に叩き折られちまうぞ」  突如背後に現れた男は、セレスティアルワンドを取り上げると、片手でリリスのローブを掴み、ブンブン振り回してからトロルめがけて投げつけた。  悲鳴を上げて一直線に飛んでいく彼女は、涙を流し顔をくしゃくしゃにしてもがいた。 「はあ、みっともねえパーティだな。  ほんじゃあ、軽くいってみるか」  片足をスッと前に擦り出したかと思うと、棒を一振りして小声で何かを(つぶや)いた。  凄まじい火柱がトロルの足元から立ち上り、一瞬、断末魔の悲鳴を聞いたきり、炎がゴウゴウと上っていく軌跡と一緒に黒い塊と化し、粉々に灰が散って消えた ───
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