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....女装男子?
「あー!美味かったなー!」
ブレザーのポケットに両手、突っ込んで、ギターケース背負って髪靡かせて、宮村がそう言って笑う。
....なんだかな。可愛いのに、いや、美形なのに。なんだかなあ...違和感すげ。
「なあ」
「あ?」
「....や。お前のさ、短髪だった頃の写メとかあんの?」
宮村が俺を向いた。
きょとんとしてる。
「....あるけど。なんで」
「や、別に。なんかどんなんだろ、て思って」
「....よくわかんねーけど。まあ、ラーメン美味かったしなあ?」
固まって立ち止まっている宮村はまた指定の鞄、ガサゴソしてスマホ取り出してピコピコやって。
「ほらよ」
俺に画面突きつけた。
「....?」
画面、凝視して、首捻る...。
なんかロゴ入りのTシャツに細身のデニム、ショートカット、になるのか?
無表情の宮村が突っ立ってる。
....なんか読モみてーな。
メンズモデルみたいな?
美少年みたいな?
「....お前、女装してる?」
あ、沈黙。キレんのか、こいつ。
「....あー、それな。だからなんだよなあ、お袋に言われんの、それ。だから髪伸ばせってうっせーんだよなあ」
....ああ、なるほどな。
「つーか...イケメンだな」
あ、ヤバい、こいつがキレそうなこと言っちゃった。
「....俺、女だけど。でも、なんでだろうな、たまに言われるな、そう言われれば。女子のファンっつーか、ライブ後とかよ」
「....女子の?」
「ああ」
....ダメだ。
宮村、別にキレてはない。ただ口ひねらせてるだけ、なんだけど。
「もういいか?」
「あ、うん」
「これから俺、スタ練だからよ、俺、わりーけど」
「....スタレン?」
「ああ?スタジオ練習。バンドのな」
「....ああ、なるほどな」
「ありがとな、ラーメン美味かったわー。ちょっくら楽器屋寄ってからスタジオ行くから俺、あ、そうだ」
またスマホ、ピコピコし出した。
「お前、ライブハウスの場所わかる?」
「いや、わかんね」
「ほらよ、読み込めよ。位置情報、送ってやっからよ、ライブハウスのよ」
宮村は今度は自ら、真顔ながらQRコードを突きつけた。
こうして、図らずとも宮村の連絡先を入手した俺だった。
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