....女装男子?

1/1
前へ
/5ページ
次へ

....女装男子?

「あー!美味かったなー!」 ブレザーのポケットに両手、突っ込んで、ギターケース背負って髪靡かせて、宮村がそう言って笑う。 ....なんだかな。可愛いのに、いや、美形なのに。なんだかなあ...違和感すげ。 「なあ」 「あ?」 「....や。お前のさ、短髪だった頃の写メとかあんの?」 宮村が俺を向いた。 きょとんとしてる。 「....あるけど。なんで」 「や、別に。なんかどんなんだろ、て思って」 「....よくわかんねーけど。まあ、ラーメン美味かったしなあ?」 固まって立ち止まっている宮村はまた指定の鞄、ガサゴソしてスマホ取り出してピコピコやって。 「ほらよ」 俺に画面突きつけた。 「....?」 画面、凝視して、首捻る...。 なんかロゴ入りのTシャツに細身のデニム、ショートカット、になるのか? 無表情の宮村が突っ立ってる。 ....なんか読モみてーな。 メンズモデルみたいな? 美少年みたいな? 「....お前、女装してる?」 あ、沈黙。キレんのか、こいつ。 「....あー、それな。だからなんだよなあ、お袋に言われんの、それ。だから髪伸ばせってうっせーんだよなあ」 ....ああ、なるほどな。 「つーか...イケメンだな」 あ、ヤバい、こいつがキレそうなこと言っちゃった。 「....俺、女だけど。でも、なんでだろうな、たまに言われるな、そう言われれば。女子のファンっつーか、ライブ後とかよ」 「....女子の?」 「ああ」 ....ダメだ。 宮村、別にキレてはない。ただ口ひねらせてるだけ、なんだけど。 「もういいか?」 「あ、うん」 「これから俺、スタ練だからよ、俺、わりーけど」 「....スタレン?」 「ああ?スタジオ練習。バンドのな」 「....ああ、なるほどな」 「ありがとな、ラーメン美味かったわー。ちょっくら楽器屋寄ってからスタジオ行くから俺、あ、そうだ」 またスマホ、ピコピコし出した。 「お前、ライブハウスの場所わかる?」 「いや、わかんね」 「ほらよ、読み込めよ。位置情報、送ってやっからよ、ライブハウスのよ」 宮村は今度は自ら、真顔ながらQRコードを突きつけた。 こうして、図らずとも宮村の連絡先を入手した俺だった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加