親愛なる幼馴染みのあなたへ。

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 午後も四時を過ぎると、斜めになりかけた西日がきつく屋根の下にも差し込んできました。お盆を過ぎると日に日にその時間が早まってくるのを感じたものです。  その頃にはお客さんもぼつぼつと帰りだして、海からの風もやや涼しさを感じさせる様になってきました。  夕暮れの海は静かな時には本当に美しいものです。  空の色をそのままに映し、色を微妙に変えて行く様は地元民であってもしばらくじっと見つめていたくなるものでした。  手も止まり、片付けをいつするのかタイミングを読むこともできませんでした。  そんな中、私はいつも早く帰りたいという気持ちでしたが、あなたは違いましたね。てきぱきと次にすることをいつも見据えて。  母に私はよく叱られたものです。でも叱られる意味すら判らなくてずいぶんと困ったものでした。  私は仕事というものの意味を結局大人になってからも相当時間が経たないと意味を理解することができませんでした。  いえ、おそらくは今でも本当に理解しているとは言えないのかもしれません。
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