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「中佐、お願いがあります!」
打ち合わせをしていた中佐は顔を上げた。それは先ほど声を上げかけた部下だった。
「何だ、アイボリー少尉」
「今回の作戦に、自分も参加させて下さい」
「駄目だ」
中佐は即答した。だ
がアイボリー少尉も引き下がらなかった。
正直、この上官に自分から声を掛けるのは、このまだ士官学校を卒業したばかりの彼にとっては非常に怖いことだった。だが。
「お願いします」
「知り合いが居る奴は基本外す」
「は!?」
何故判るか、といいたげな表情だった。当然だろう、とコルネル中佐は思う。
「作戦の前段階で調べはついている。それにお前は顔に出すぎる」
は、とアイボリー少尉は真っ赤になる。そしてそれに追い打ちを掛けるように中佐は続けた。
「下手にそんな奴が居ると足手まといだ」
「は、はい…… それはそうなんですが……」
「判ったら、行け。お前の任務は何だ?」
「はい、あの、自分の役目は中途待機の通信です」
「判ってるならいい。準備を急げ」
はい、とアイボリー少尉は引き下がった。姿が見えなくなると、上陸隊の一人に任じられたアンバー中尉がつぶやいた。
「行きたいだろうな」
「知ってるのか? データ的な意味以上に」
中佐は片方の眉を上げ、ちら、と部下を見た。
「あの10人の中の、セルリアン准将って人が、昔、奴の父親と友人だったと聞いたことはあります」
「ほお」
「さすがに奴が士官学校に行ってからは会うこともなかったらしいですが、元々憧れて軍に入ったとか言ってましたから……」
「詳しいな」
コルネル中佐はくくく、と笑った。は、とアンバー中尉は顔を赤らめた。そして中佐はそのまま笑いを引っ込めることなく、次の言葉を続けた。
「だが感情が出るのはいかん。我々はこの場所を奪回しなくてはならない。無論基本は無血開城だ。無血逮捕がベストだ」
上陸隊の顔が引き締まった。
つまりは、基本は基本で、知り合いだろうが何だろうが、いざとなったら殺せ、と上官は言っているのだから。
彼らは上官の笑顔を最も恐れる。
「クリムゾンレーキは結構大気圏外の防衛ラインがきつい。まずそこをくぐり抜けるのが先決だな」
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