第5話 歴史的に見て「五人組」という名の集団が良かった試しはない

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「軍警のコルネル中佐だって?」  報告に対し、声を挙げたのはセルリアン・ブルウ准将だった。 「知っているのか?」  その場に居た佐官は訊ねた。 「知っているも何も――― 軍警内でも凄腕として有名だ」 「さすがに中央の方は情報量が違うな」  何、とセルリアンは如何にも地方の名士を気取るような「同志」の一人をにらみつける。 「知らぬことを自慢にするな。ローズ・マダー大佐」 「これは失礼」  ローズ・マダーと呼ばれた大佐は、エリート然とした中央の准将に軽く礼を返した。 「だが我々の地元軍の手で落ちるくらいなら、大したことはないでしょう。買いかぶりではないですか?」  セルリアンは口をつぐむ。彼とて噂以上のものは知らないのだ。  まあまあ、とその二人の間に、やはり中央からやってきた士官であるカドミウム大佐が入る。 「だったら皆で奴の尋問をご覧なされば良いでしょう。いずれにせよ、軍警が何を目的として彼を派遣しているのかは探らなければなりますまい」  尋問室へと大の大人達はぞろぞろと歩いて行った。  元々は第二放送室だったらしい。ブースの向こう側とはガラスで区切られていた。  コルネル中佐はうなだれて、金属製の拘束具のついた椅子に固定されていた。 「何だ貴官らは」  そこには既にコーラルと、そしてもう一人「五人組」の一人、インディゴ大佐が居た。  インディゴは、自分達の捕まえた奴に何か手を出すつもりか、と言わんがばかりの目で入ってきた三人を眺めた。  五人組が入ってしまうと、元々大きな部屋ではない尋問室は、ひどく狭くなり、他の兵士の入る余裕が無い程だった。  セルリアン准将は、尋問が終わったら後で処理のために呼ぶから、と兵士達に出ているように命令した。  処理の意味を知っている兵士は、あまりいい表情はできなかった。  ブースには旧式の尋問用の神経拷問装置が用意されていた。最近は良く使われるらしく、機械にほこりが積もっている様子はない。 「使い方は判るか?」  セルリアンは誰ともなく訊ねた。コーラルは自分の上官に視線を渡す。 「知らないことを自慢にするのかな?」  ローズ・マダーはブースに入ると、だらんと力が抜けた状態のコルネル中佐の真っ赤な髪の上に、機械の端末を取り付けた。  悪趣味な頭だ、とローズ・マダーはつぶやいた。まるで血の色だ、と。 「旧式だが、意外に有効だ。個人の過去の内、最も過酷な部分を増幅させて追体験させ、それを繰り返す」  ほお、とカドミウムは感心する。 「まあそれが基本なのだが、情報を映像化できる優れものでもある」 「旧式とは言えそうそうあなどれるものでもないという訳だな」 「そうだ」  ふん、とインディゴは鼻を鳴らした。  だがモニターに目をやった彼らは、次第に顔色が変わっていく自分達に気付いた。
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