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第7話 事態は彼の思惑とは外れていった。
妹の結婚式を終えて宿舎へ戻ると、コーラル中尉は待ちかまえていたように彼に話し出した。
彼はどうしてそこまでするのか、と同僚に素直に訊ねた。するとコーラルは熱っぽく拳を握りしめて力説する。
「何でかって? そりゃあ大尉の考えに賛同できたからだよ!」
「だけど、無謀じゃないのか?」
「お前は時々妙な所で慎重だなあ」
ははは、とコーラル中尉は笑う。彼は眉をひそめた。
慎重とかそうでない、という問題ではないのだ、と彼は言いたかった。
だが言えなかった。彼はそういう気質だった。角が立つのは嫌いだった。
「でもさ、お前もそうは思わないのかよ? ああそうだ。これを聞けばも少しその気になるかなあ?もうじき税率が上がるってよ」
「税率が?」
この場合の税は、帝国全土におけるものを指す。
「そ。それもその原因は、帝都中央の汚職が原因だって言うんだよ?それで何やら国庫が少しやばいから増税、それに公職関係の賃金カット」
「……」
「確かに公職の賃金カットは仕方ないけどさ…何で中央の尻拭いを俺達がさせられなくちゃならないんだ?」
「それはひどいな」
「だろ?」
理解はできる。だが、だからと言って、積極的に気が進むという訳でもなかった。
例え多少の不満があろうと、税金が上がろうと、彼は穏やかに生活ができれば充分だったのである。
軍に居るのは、そこが一種の「公職」で、実に堅実な仕事場であったからに過ぎない。
不思議なもので、軍に居ながら彼には、戦場に出るという意識がなかった。
尤もそれは彼だけでなく、クリムゾンレーキの軍に属する青年の共通した認識だったかもしれない。
仕方がなかったとも言える。平和な惑星に生まれついて、穏やかな気候のもと、彼らは生まれついてからこの方、地元軍が戦場に出る様など見たことがなかったのだから。
だが事態は彼の思惑とは外れていった。
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