第9話 彼の目の前に、朱が広がった。

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第9話 彼の目の前に、朱が広がった。

 それからのことは、半ば意識の無い状態の彼を人形の様に引き回しては、行われていった。  軍事法廷の裁判長は、彼に銃殺刑を命じた。  それは彼にとって、遠くの出来事のように聞こえた。半分は投与された薬のせいでもあるが、彼自身の衝撃もまた強すぎた。  だが、彼は自分が法廷から連れ出される際に、次の番として宣告される人物達を見て頭から水をかけられたような気がした。目が覚めた。  彼の部下であった下士官五人が、揃って法廷に引き出されている。それを彼はそれまで知らなかった。自分の宣告を夢の中のように聞いていた彼も、その時には正気に戻った。
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