第9話 彼の目の前に、朱が広がった。

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 彼らが何をしたって言うんだ?  無論自分に関してもそうは思う。だが自分に関しては、多少なりとも彼は自分の甘さを感じていた。  自分はずっと、ローズ・マダーやコーラルの態度に違和感を感じていた。感じていたはずなのに、何もせず、ただ事態に身を任せていた。  自分の甘さを痛感した。そして家が、家族が焼けてしまったということもあり、彼はそのまま終わってしまうのも仕方がない、と考え出していた。  だが。  下士官の彼らは。  彼らは馬鹿正直に、熱に浮かされただけではないか。疑問を持っていた自分と違って、奴等の言うことに従っていたじゃないか。なのにそれが自分の部下であるからと言うだけで。  何とかしなくてはならない。  彼は思った。  何とかしなくては―――
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