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第10話 「何だこれは!」
ローズ・マダー大佐は機械のスイッチを思わず切っていた。傍らのコーラル中佐も、その顔は色を失っていた。
「今のは何だ? 大佐――― 貴官ではないのか?」
セルリアン准将は眉をひそめて訊ねる。
「如何にも私だ……」
「裏切り者?」
熱血な中央の将官は声を低めた。ローズ・マダーは大きく首を振る。
「だが何のことだかさっぱり判らん!」
「だが大佐、今の映像は、コルネル中佐の記憶そのものです。機械は正確だ。つい最近行った尋問でもこれは有効な」
コーラルは声を震わせながらも、彼の上官に適切な意見を述べようと努力する。
「知らんと言ったら知らん! これは罠だ!」
ローズ・マダーは声を張り上げた。するとインディゴ大佐は冷ややかな笑いを唇の端に浮かべた。
「罠! ほう、罠、というだけの何やら貴官には思い当たるふしがあるのですな?」
「仲間割れはいけませんぞ」
カドミウム大佐がおずおずと口をはさんだ。
だがローズ・マダーは明らかに動揺していた。その様子は横で見ているコーラルにも一目で判った。彼も彼とて動揺していたのだ。
この映像が誰のものであるのか、ローズ・マダーもコーラルも既に理解していた。あの視点で出来事を見られる人物は、たった一人しかいないのだ。
だがこのことは、現在の「同志」たる治安維持部隊の将官には知られない方が良いことである。
彼ら二人は過去、惑星一つ巻き込んだ軍部の「反乱」に首謀格として参加していた。それは現在の状況と大して変わるものではない。
だがその時は、充分な武力がクリムゾンレーキに常備されていなかったことから、事態はあっさりと帝国本軍への全面降伏という形に集束されていった。
そしてそこにはスケープゴートが必要だった。その時にスケープゴートにした士官の名は――― 確か―――
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