第10話 「何だこれは!」

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 ローズ・マダーは扉を大きく開けはなった。そしてガラスの向こう側へ入ると、コルネル中佐に取り付けられていた装置を一気に取り外した。  炎のように赤い髪がざっ、と揺れる。  ぐっと彼の襟を掴むと、いきなり殴りつけた。ぼんやりと彼の目が開く。  金色の目がぎらりと、ローズ・マダーを上目づかいににらみつけた。 「貴様は誰だ」 「……」 「答えろ」  「コルネル中佐。軍警コンシェルジェリ地区担当――― 三年前まではサルペトリエールの―――」 「そんなことを聞いているのではない!」  今度は逆方向からローズ・マダーの殴打が飛んだ。二度、三度と飛んだ。どうやら口の中が切れたらしい。唇の端から血が流れる。  ちら、とコルネル中佐はガラスの向こう側を見て確認する。  まだメンバーは変わっていねえな。  きちんと、こいつを含めて五人居るよな。  セルリアン准将、インディゴ大佐、カドミウム大佐、コーラル中佐、そしてこのローズ・マダー大佐。  「五人組」だ。上手くひっかかったものだ。上等。  だが妙な雰囲気が流れているのに彼は気付く。自分が神経拷問の装置にかけられていたことを思い出した。そしてその効果の程も。  彼は普段、軍警でそれを使う立場だった。  多少その機械のレベルがアップしたところで、根本的なところは変わるものではない。  確かにいい効果だ。自分でなければギブアップしているだろう。  だからそれがどういう映像を彼らに見せていたのか、彼はそれをよく知っていた。自分の今まで見ていた光景。  奴らはそれを見ているのだ。済んだこととは言え、あの炎はやはりあまりいい記憶ではない。確かに思い出したくない記憶ではある。  だがわざわざ見せられたのなら、利用しない手はないのだ。  奴らは、明らかに動揺している。 「誰だと答えて欲しいんだ? ローズ・マダー」
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