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第11話 代わりに出たのは、笑いだった。
捕虜を尋問すると言って閉じ込もった「五人組」からの応答が無い。兵士達は次第に不安になった。
どうしたのだろう?
様子を見に行くべきか?
そして通信を送ってみる。反応がない。五人も居れば、誰か一人でも何かしら返してきてもいい筈になのに。
兵士達もさすがに、何やらただならぬことが起こっていることに気付いた。
尋問室を出たコルネル中佐は走りだした。
敏感な耳は、大量の兵士が追って来ていることを正確に判断している。
数名だったらともかく、二桁になると厄介だ。彼は兵士の姿が見えた瞬間、軍服の、襟に近いボタンを一つ引きちぎると投げた。
カンシャク玉のような音が上がる。濃い赤の煙も上がる。
その赤の煙を識別して、兵士達は真っ青になった。引火性粒子の小型発生装置だった。
「銃を使うな!」
事態を把握した下士官の声が聞こえる。彼らは何だかんだ言って、実戦の戦闘に慣れている訳ではなかった。
真っ赤な煙の中、彼は管制室に向けて走った。
爪は伸ばしたままだった。それを目にした兵士の顔には、見てはならないものを見た時の驚愕の表情が浮かんでいた。
目撃されてはいけないものを見せながら走る。
つまりそれは。
助走を付け、兵士の上を飛び越し、彼の手はひらりとその首をかっ切っていく。
その姿を一瞬でも見た若い兵士は、奇声を上げ、その場から逃げていく。
当然だ。
早く逃げろ。
好きでやっている訳じゃねえし。
言い訳ではなかった。
俺はただ生きたいだけなんだよ。
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