第12話 悲鳴が上がった。

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「コントロールキーをよこせ」  彼はゆっくりと近付いていく。スタッフ達は恐怖で動けない。そして動けないのに、目が離せない自分に気付いていた。  中佐は同じ台詞をもう一度繰り返した。  スタッフは機械のある部分を指した。彼はちら、とそれを確認する。確かにそれはまだ差し込んだままだった。  あ、よせとその時声が飛んだ。  なけなしの勇気、もしくは無謀さがスタッフの一人には残っていたらしい。銃を両手で掴んで、彼めがけて引き金を引いた。  痛い! と固まっていた周囲のスタッフ達が銃弾がかすめていく衝撃に頬を、手を押さえた。  次の瞬間、撃った本人は信じられないものを見た。  確かに、当たったはずだ。いくら後方仕様の銃だって、至近距離で撃てば――― その位の威力は…  だが目の前の者は。 「化け物」  撃ったスタッフは全身から血が引いていくのを他人事のように感じていた。めまいと耳なりが同時にした。  コルネル中佐は、左胸の穴の開いた服に軽く指を突っ込むと、弾丸を取り出し、指で軽く弾いた。それは撃った当人の鼻先に命中した。  そしてそれが何処に命中したのか、確かめるだけの余裕はもはや彼らにはなかった。
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