第12話 悲鳴が上がった。

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 最後の血溜まりを踏みつけると、彼は管制塔のキーを自動から手動に切り換え、全システムを自分の元に置いた。  てビル内の全ての扉という扉を閉鎖し、その中に睡眠ガスを送り込んだ。それは最初の計画から決まっていた手順だった。  全てのフロアにガスが行き渡ったことを確認すると、彼は通信回路を開き、中間待機の通信士官に向かって言った。 「聞こえるかアイボリー少尉? 作戦は何とかなったから、迎えに来い…」  通信機の向こう側で、ご無事でしたか、と若い少尉の明るい声が聞こえた。 「ついでにカーマインを通って、向こうの放送局に居るだろう連中を引き取ってこい」  はい、と弾んだ声が聞こえる。  セルリアン准将の遺体を見たらこいつはどう思うだろうか?  そう彼の頭をかすめた考えがあったが、それは大して大きくは広がらなかった。  髪から赤い液体がぽとん、と落ちた。ぬらぬらとして生臭い。  最初に浴びた血は、既に服の上に黒く乾いていた。そして一番新しいものは、まだその出所からとろとろと流れ出している。  出所は、自分を化け物と呼んだ。  確かにそうだろう。  彼は思った。こうまでしても、既に自分には全く罪悪感などないのだ。  無論、そんな行為で快感が得られる訳ではない。  かと言ってこれだけの血を浴びながらも、既にそれに関して感じる心は何処かへ行ってしまったかのようだった。  化け物か。  爪をぬぐって、彼はつぶやく。  確かにな。
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