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エピローグ
鍵が開いていた。
慌てて扉を大きく開けると、そこには連絡員の陽気な笑顔があった。
「よお」
「居たのか」
彼は掴みかけた銃をしまう。
「優しいねえ、大家のおばさん。俺が鍵貸して欲しいって言ったら、愛人さんなら構わないよってにこやかに貸してくれて。俺っておばさんキラーの素質あるのかなあ」
中佐は、くたびれてしまった帽子を掛けながら連絡員の顔を眺めた。
どうしたの、とキムは訊ねる。
ずいぶんと懐かしい気がしていた。だが出たのはこんな言葉だった。
「何か用か?」
「いんや。今回は、あんた結構な戦闘だったらしいじゃない。いつもより充分。多少のオーヴァヒートはしているだろうからその調整と」
その台詞を聞くか聞かないかのうちに、勢いよく彼は、カウチに身体を投げ出した。だがいつもと違い、横にいるキムに視線一つ加えない。
いや加えてもいいし、手を出してもいいのだが、その気力が湧かない程にこの時彼は疲れていた。
「Mは何か言っていたか?」
「いや別に」
「ああ、そうか」
嘘ではないだろう、と彼は思う。
あの盟主がそんなことで、自分に気を使うことはないのだ。
「MM」の盟主は、弱さを嫌う。
自身の能力の有無すら計れないのに、弱さを口実にして、不可能を可能にする努力を怠る者を嫌う。
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