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「『伯爵』ルートで送り込んだ奴は、元々は帝都の防衛隊で『MM』のシンパをオルグさせてた奴なんだけどさ。人事異動だって言うんで向こうの治安維持部隊を何とかしろって潜り込ませた」
「まあ治安維持部隊ってのは基本的に軍の中でも、その場に関係無い奴が行くものだからな」
「そう。ところが」
「失敗か?」
「失敗というとこれもまた問題があるのよ。ある程度成功してる。ところが、増えすぎて、今度はそれがエスカレートしすぎた。で、当の最初の奴自身が、今度はそこの雰囲気に舞い上がりすぎてとうとうクーデター」
「何処にも毒されたがる馬鹿はいるもんだな」
「そういうこと。あそこの気質はどーも伝染性らしいよ」
「馬鹿か」
中佐は短く言い放つ。
「黙って内部から崩せばいいものを、クリムゾンレーキ全土を帝国から独立させよう、なんて馬鹿騒ぎ。軍でも極秘の情報だよ。近々軍警に出動要請が来るだろうってこと」
「成る程」
煙草の灰が落ちる。
彼は灰皿に吸い尽くした一本をにじりつけた。
「それで俺には?」
「もちろん皆殺し」
お天気の話でもするようにあっけらかんと告げた。
「軍警は生かして逮捕、が基本だろ? だが無論『我々には』そこまで親切にする義理はないしぃ」
そんなことだろうな、とコルネル中佐は煙草の新しい一本を手に取った。
「命じてはないもの。ずさんな計画。統制のとれてない集団。今の所は、治安維持軍という位置を利用して何とかなってるけど、分裂して捕まるのも時間の問題。それにそういう奴は口が軽い」
「そいつは困ったもんだな。早めに塞がなくちゃならねえよな」
くくく、と中佐は笑った。
「そういうこと」
キムもつられて笑った。それは実にさわやかな、陽気さすら感じさせる笑顔だった。
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