第2話 かくして休暇は終わりぬ

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第2話 かくして休暇は終わりぬ

 惑星コンシェルジェリの軍警支部にその知らせが入ったのは、中佐のもとに連絡員やってきた三日後だった。  軍警の若い士官達は、久々に見るコルネル中佐の機嫌をそっと伺う。  どうやら彼らの上官は、充分満喫した休暇を過ごしてきたらしい。機嫌は良さそうだった。彼らは皆一様にほっとする。  ところが彼らの安堵はそう長くは続かなかった。  彼らの上官が呼ばれた通信機の前から立ち上がった時、不吉な予感は、次第にその体積と密度を増していた。  彼ら軍警の実働隊にとって、コルネル中佐は畏敬と恐怖の対象だ。  このコンシェルジェリ支部において、彼は以前のサルペトリエールから転属してきてから、支部長、副支部長に次いでナンバー3の位置にある。  実働隊を一人として指揮しない総責任者とは違い、いつでも前線に出て指揮をし、必ずと言っていい程任務を遂行し、帰還するのが彼だった。その姿勢が、実働隊の部下達に尊敬されない筈がない。  一方で彼は恐怖の対象でもあった。  確かに彼は必ず生きて帰るのだが、その際に手段を選ばない。  さすがに味方を売り渡すような行動に出ることはないのだが、「ついて行けない者は見捨てる」と公言し、それを明らかに実行に移している。  任務第一、の軍人としては当然なのだろうが、かつての様に大きな戦争も無い今日、まだ学校から出てきたばかりの若い士官や、「軍内部の不正を正す」とかの理想に燃えて軍警に配属されているような者には、彼の態度が冷酷に思えることも多い。それが反感にまで至らないのは、結果として彼の行動が正しいことが往々にしてあるからなのだが。  何にしろ彼は、その燃える火のような赤の髪、光の加減によって人間味を失わせる金色の目、といった強烈な外見もあって、遠まきに敬意を払われている。
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