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セミがひときわ大きく鳴いた。ダンボール箱を前にボンヤリとしていた僕は我に返る。
「あれからもう五年か」
しみじみと口にしてから、
「何も変わらないや僕は」
力なく笑う。母さんとの今生の別れを迎えたあと、実家を出た僕は今も一人暮らしを続けていた。
「これって仕送りだよな……もう死んでるのに何で?」
改めてダンボール箱の中身を確認する。
「それも塩気が濃いやつばっかり」
塩飴に梅干し、塩鮭の切り身の真空パック、極めつけはお徳用塩昆布。
「熱中症対策のつもりかな? でもさすがに多過ぎるよ」
腕を組んで首を捻っていた、その時。
「……ん?」
先ほど荷物を届けにきた配達員が再び姿を現した。
「君はさっきの」
配達員はその場にしゃがみ、ポケットを探った。こちらには目もくれずに配達員はライターを鳴らすと、
「確かに届けたから」
僕の墓前に線香を立て、呟いた。
「父さんのために」
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