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6-1 無自覚
突然サミュエルが僕の傍に来なくなった。別教室の移動にも出迎えに来なくなる。部屋に戻れば同室だから彼の気配は感じ取れるのだが、無口なサムは僕から話しかけない限り口を開くことはない。それにここしばらく鍛錬だと言って朝早くに出かけ、夜は消灯ギリギリまで戻ってこない。わざと僕と顔を会わさないようにしてるのだ。それが数日続くともう僕は我慢が出来なくなった。
ちゃんと夕飯は食べてるんだろうか。汗をかいた後は着替えてるのか。水分は取ってるんだろうか。ケガなどしてないのだろうか。気になって仕方がない。
サムってば極端すぎるんだ! 急に傍に来なくなるなんて。約束したって言ってたのはどの口だ! ひとこと言ってやらないと気が済まない。その日は腹が立ってなかなか眠れなくて結局サムが戻ってくるまで起きていた。
そっと扉が開く気配がしてサムが部屋に入ってきた。僕が起きていたことに一瞬、戸惑っていたが、そのまま背を向け着替えだした。ただいまぐらい言ってもいいじゃないか!
「サム! いい加減にしろ!」
僕はサムの胸倉をつかみあげた。
「……!」
サムは瞠目している。そりゃそうだろう。いきなりつかみかかって来られたのだから。
「最初に言っただろ! 気に入らないところがあるならちゃんと言って欲しいって! なんで無視するのさ! 僕のどこが嫌なのか言え!」
「……嫌ではない」
「じゃあなんで無視するのさ!」
「してない」
「してるじゃないか! このバカ!」
「お前、よくもこの俺に向かって……!」
サミュエルが苛ただしそうに答える。
「サムのバカやろぉ!」
せっかく仲良くなれたと思ってたのに。サミュエルの良いところは僕が知っている。冷たそうに見えるが実は親切な奴だっていう事も。責任感が強いって事も。引き締まった筋肉質な身体は日々鍛錬に時間を費やしてるからだ。きっと将来は有望な騎士になるだろう。その青い濁りのない瞳で剣をふるうさまは見るものを圧倒させて……僕はそんなサミュエルが好きなのに。好きな奴に冷たくされるのはツライじゃないか。
「……うっ。悪かった」
「なんだよ! 何が悪いんだ!」
「すまん。泣くな。お前に泣かれるとどうすればいいかわからなくなる」
「へ……泣いてなんか……」
気づいたら僕の目から涙がぼろぼろこぼれ落ちていた。
「さ……サムが僕を泣かせたんだ!」
「そうだな」
感情が高ぶりすぎたみたいだ。我ながら支離滅裂じゃないか。これじゃあサムを困らせるだけだ。わかってはいるが涙が止まらない。
「サム。僕が嫌いじゃないなら何故話してくれないんだ。うっうう。サムと話しがしたい。鍛錬だって一緒にしたいんだ。ひっく。うぅ。僕を無視するな」
ああもう、これじゃあ子供みたいだ。めんどくさい奴だと思われてたらどうしよう。
「困ったな」
「ごめん。僕って面倒だよね」
「いや。可愛すぎる」
「……へ?」
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