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7-2*
「っ……」
サミュエルが舌打ちをする。体がこわばった感じがするが、邪険にされないのでそのまますり寄る。きっと僕がもたれかかったので本が読みずらいのだろう。今日のおやつは素揚げのポテトだ。揚げたてが美味いんだけどと思ってるとサミュエルと視線が合った。
「食べる? 美味しいよ。本が汚れるから食べさせてあげるよ」
僕が彼の口元にポテトを持っていくと、もぐもぐと咀嚼し最後の一口を大きな口を開けて指ごと咥えられた。舐められて何だかドキドキする。
「えっと……」
僕をじっと見つめたまま指に舌を這わせてちゅっと吸い付かれた。
「……塩が効いてる」
じっと見つめられたままで気が動転した僕は舐められた指をペロリと舐め返した。
「確かに……塩が効いてるね」
サミュエルが瞠目したのと同時に腕を引かれ抱き込まれた。
「ったく! 俺を試すな! わかってんのか? こんなに密着してきて」
「え? ……」
「俺をもっと警戒しろ」
鼻がぶつかるほどの至近距離で見つめられた。あぁ、この青い瞳が好きだ。
目を閉じるとサミュエルの唇と重なる。もう彼と会えなくなるのかもしれない。それなら一度でいい。一度でいいから。
「サム……好きだ」
「……知ってる」
口づけが深くなる。キスなんて挨拶程度しかしたことがなかったのに。
「んっ……ぁっ……んん」
鼻から抜ける自分の声が妙に艶っぽくて恥ずかしい。
唇が離れても僕はサミュエルの首にまわした腕を外せなかった。
「……アル。この部屋には別名があるんだ。その名の通りになるわけないと思ってたんだがな」
そうだ。二人部屋のここは皆にヤリ部屋と呼ばれていた。
「僕のせいにして」
「っ! そんな顔するな……いや、アルだけのせいじゃない。俺はアルが俺以外のヤツに触られるのがいやで……あ〜もうっ。俺は言葉がたりないんだ」
「ふふっ。知ってる」
「ずっと我慢してたんだぞ」
何をとは聞かなかった。僕のこの気持ちがサミュエルと同じなら良いなと思うだけだ。
「我慢しなくていいから」
だってもうこんなに一緒に入れる時間はないかもしれない。
僕の返事にサミュエルが目を細めてほほ笑んだ。なんて綺麗に笑うんだろう。僕は初めてサミュエルの笑顔を見た。
「アル。アルベルト。お前の全部を俺がもらう」
「うん。いいよ。全部あげる」
そのまま抱きあげられてベットに連れていかれた。迷うことなくサミュエルが服を脱ぐ。褐色の肌に割れた腹筋。鍛え上げられた筋肉に見惚れる。
「僕も脱ぐ」
同じように脱ごうとすると手を止められた。サミュエルが僕のシャツのボタンをひとつずつ外していく。自分が脱がせたかったようだ。彼と比べると軟弱な身体に恥ずかしさが募る。
「……綺麗だ」
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