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◇◆◇  週末になり僕は公爵家にやってきた。めちゃくちゃ緊張する。 「あら? 久しぶりに帰ってきたかと思えばお友達連れなのね」  金髪でとても綺麗だが気位が高そうな女性が目の前にいる。おそらくこの人が義母なのだろう。 「ただいま戻りました」 「はじめまして。僕はサム……サミュエルくんと同部屋のアルベルト・ツイリーと言います」  僕は儀礼的な挨拶をした。すると奥からバタバタと足音がする。 「兄上! お戻りですか!」  金髪碧眼の利発そうな少年が駆けてきた。この子がサミュエルの弟なのだろう。物怖じしないようで僕にも話しかけてきた。 「こんにちは。兄上の大事な方ですよね?」  ニコニコと笑顔で僕を見上げる。友達は大事だということだろうか。 「ごほん。アル、父上に挨拶に行くぞ」 「は、はい」  僕はサミュエルに引きずられるように公爵家の奥へと入って行った。  広い応接室に金髪碧眼の威厳のある男性が座っていた。きっとサミュエルが歳を取るとこんな感じになるのだろう。 「父上ただいま戻りました。アルを連れてまいりました」 「お初にお目にかかります。アルベルト・ツイリーと申します」 「なるほど儂に似てお前も面食いだったのだな」 「……」 「おっとすまないな。自己紹介が遅れた。儂はレイノルド・ブラッドリーだ。そこにいるのが妻のマイラとサミュエルの弟のカーネルだ」 「はい。さきほど玄関でお会いしました」 「愚息が世話になってるようですまないな」 「そんな。サミュエルは寡黙なだけで真面目で紳士的で何事も真摯に立ち向かうことが出来る。僕の方こそ彼に頼りっぱなしで。僕は彼を尊敬しています」 「ふむ。なんじゃ、まんざらでもなさそうじゃないか」 「といいますと?」  僕が聞き返すとサミュエルが僕の手を取った。 「父上。俺とアルベルトは婚姻しますのでご尽力をください」 「え? こ、婚姻?」  それって……。この国は嫡男以外は男性同士の婚姻も認められている。あえて世襲を騒がせないため子孫は作らないという態度を示すのだ。だけどプロポーズもされた覚えはない。いきなり婚約ではなく婚姻とは? 「……全部をもらうと言っただろう?」  やはり彼は言葉が足りない。僕は赤面したまま頷いた。
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