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第一章:1-1 相部屋で待っていたのは塩対応
都会から少し離れた郊外にたてられたヴィクトリアン調の重厚な赤レンガの建物。曲線を描くアーチ窓。尖塔。荘厳な外観。遠目から見ればまるで大聖堂に見える。
しかしここは騎士団養成の寄宿学校である。貴族や裕福な家の子息が多く在学している。ここでその実力を認められて各騎士団に配属されたり、王宮勤務に抜擢されるものも多い。
それにここの寮はかなり充実していて一人一部屋が与えられる。広さはだいたい六畳。マホガニー材の木目が美しいベットと作り付けの机と本棚がセットになっている。風呂とトイレは共同だ。ただし角部屋だけは二人部屋なのだ。その代わり広さが倍以上ある。トイレとシャワーブースも備え付けである。今僕がいるのはその角部屋だ。
やっと空きができたからと念願の部屋替えがあった。かなり前から打診していたのだ。
本来なら一人部屋だったのだが、少しでも広い方が良い。狭いと閉塞感を感じてしまい発作がでてしまう。そう、僕は閉所恐怖症なのだ。
角部屋に入り広々とした明るい室内にホッとする。息がしやすくなった気さえする。
「こんなに広かったんだ。これなら大丈夫だ。よかった」
壁紙は濃紺で窓は天井まであり開放感がある。机やベットがダークブラウンの色合いでシックな感じなのに対しカーテンのローズピンクがアクセントになっていた。
ごみひとつない清潔感のある部屋の真ん中には二人掛けのソファーとテーブル。両脇にはそれぞれベッドがひとつずつ。窓辺には机。壁側に作り付けの本棚とクローゼットがあった。
「あとは同室の子に早く会ってみたいな」
その思いが通じたのか、突然ガチャッとドアが開くと……無表情な青年が立っていた。
くせ毛がかった黒髪に野性的な褐色の肌。少し切れ長の青い瞳は見る者を射抜くようだ。
あ、コイツ見たことがある。確か同期で、恵まれた体格をしていたはず。今もこうして見上げなければならないって事は僕より十センチ以上は高いんじゃないのか? 僕はあまり背が高くない。見下ろされてる感が半端ない。なんだかムカつく。だがここはにこやかに、まずは自己紹介をしなければ!。
「コホン。今日から同室になったアルベルト・ツイリーだ。趣味は読書。甘いものが好きだ。同期だから敬語はいらないだろう? アルと呼んでくれ。よろしくな」
「……あぁ」
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