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「かなりの資産家の侯爵家がお前を欲しがっている」 「そんなの聞いてない……」 「子爵殿も悩んでられるようだ。あの、ジュリアンとかいう子の家らしい」 「ジュリアンってまさかあの? どうりで取り巻きが多いと思った」  食堂でアルベルトに声をかけてきた子の親が侯爵家だったらしい。 「爵位的には侯爵よりも俺の父親の公爵のほうが位は上だ。だから父に頼むしかなかった」  爵位順にしたら公爵・侯爵(辺境伯)・伯爵・子爵・男爵の順になる。サミュエルは皆の前では爵位を明らかに公言してなかった。ジュリアンはサミュエルが公爵家だと知らなかったのだろう。 「そうだったのか。でもサムは良いの? 公爵家から離れてしまって」 「最初から離れるつもりだったんだ。爵位なぞ俺には関係ない。煩わしいしがらみに縛られるのは嫌だ。守れるものと剣術があればいい」  守れるものってそれって僕のこと? 「僕は守られるだけは嫌だよ」 「くくく。そうだな。俺はそういうお前の気の強いところも気に入ってるんだ。今後は俺と共に領地経営に手を貸してくれないか」  領地経営! なるほど面白そうだ。 「僕は細かい手作業なども好きなんだ。いろいろ作物の栽培とかもしてみたいよ」 「ああ良いな。アルならいいアイデアを出してくれそうだ。アルは美しく果敢で、それなのに繊細で世話好きで。母のようだからな」 「母?」 「いや、その。俺には母親の記憶がないんだ」 「そうなのか……ん? それって僕がおかん体質ってこと?」 「おかんというのがよくわからんが、アルといると俺が癒されるのだ。アルが好きだ。アルと離れたくない。アルが笑うと俺が嬉しいのだ。アルを誰にも渡したくない。アルの剣さばきも華麗で素晴らしい。アルの……」 「わ、わかった。わかったから」  次から次へと出てくる惚気言葉に心臓がバクバクする。なんだいったい。サミュエルってばこんなに恥ずかしい事をいうやつだったか? 「俺がアルベルトを幸せにしたいんだ!」 「……なんだよそれ。恥ずかしいよ。サミュエルの……馬鹿」 「ふふ。そうだな。アルの前だとどうやら俺は馬鹿になるらしい」  僕はぎゅっとサミュエルに抱きついた。 「どんなサミュエルでも大好きだ」 「俺もだ」 「二人で幸せになろうね」 「ああ」 ~~~~~ 番外編を挟んで2章へとつづく
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