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2-2
「昨日は誠に申し訳ございません!」
僕が頭を下げるとサミュエルの父であるレイノルド・ブラットリー公爵は昨日と打って変わって威厳のある態度で僕を見下ろした。
「そのことだがな。やはりいきなり婚姻をあげるのは無理があるようだがどうじゃ?」
「はっ!かしこまりました!」
いきなり僕の父が返事をした。ガチガチに固まってるみたいだ。父さまは子爵だ。下から数えた方が早い格下のランクだ。最上位の公爵さまにお言葉をいただいただけでも緊張しているのだろう。
「返事をするのは貴方ではなくてアルベルトとサミュエルさんよ」
母さまがぽんぽんと父さまの背中をなだめるように叩く。
「僕はサミュエルと共に居ることを望みます。式などはいつでも良いのです」
「俺は正式にアルベルトと婚姻します……婚姻を希望します」
「サミュエルの気持ちはわかっておる。だが段取りもある。今回は婚約式を執り行う事にしようではないか。挙式は半年後という事でいかがかな?」
「はい。わかりました」
僕が元気に答えるとサミュエルが苦虫をつぶしたような顔になった。
「…………」
「これ。返事をせぬか。このまま教会に連れ込むつもりだろうが、自分が領地を背負う領主となる事を忘れてはならぬ」
「……御意」
サミュエルは納得してないようで今にも僕の手を引いて飛び出しそうだ。
「……だめだよ。僕は公爵様の言うとおりにするよ。焦りは禁物だよ」
「しかし……」
「いいんだよ。半年の間に頑張って皆に認められてもらえるようになるから」
「俺はアルがいいんだ。無理はしないでくれ」
無事に卒業式を終え、僕の寄宿学校生活は終止符を打った。長いようで短い時間だった。ここで学んだことをバネにしていこう。感慨に浸る間もなくすぐさま別室にて僕とサミュエルは家族に囲まれて婚約式が行われた。
サミュエルは騎士団の制服で。僕は白いスーツ姿でお互いの姿に見惚れあいながら口づけを交わした。簡素な式だったが大切な人達に包まれて僕は幸せだ。
その後、公爵家の別宅に呼ばれサミュエルの辺境伯の降爵の儀が行われた。こちらは臣下の方々もいらっしゃってかなり緊迫したムードだった。これでサミュエルの義弟の次期当主の座が確実となるのか。僕は家督争いなどとは縁遠かったので難しいことはわからないがこれからサミュエルは辺境伯として生きていくことになるのだろう。
この国では辺境伯と侯爵は同等と見なされている。子爵の我が家から見ればやはり位の高い序列ではある。
そうかこれがあったから婚姻は控えたのだな。なにやら僕が関わりのないところでいろいろとあるようだ。覚悟はして行った方がいいのだろうな。
二日ほど家族と共に過ごした後、僕はサミュエルと辺境地グリーンヘルツへと向かう事になった。
よし、かかってこい!
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