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◇◆◇  サミュエル様……いやサミュエルめ!あの青二才めが!あんなやつ公爵様の血統でなければ。そもそもあの肌の色には鳥肌が立つ!奴隷のような肌のくせに!この吾輩に恥をかかせよって!パレードだと?ふざけよって! 「この地はノワール伯爵領。吾輩の領地なのだ!吾輩が管理しておるのだ!それを生意気な口をたたきよって!」  あんな女のような顔立ちの男が婚約者だと?笑わせる。王都で何をやっていたのやら。 「はん。母親があんなだから。息子もああなるんだな」  あの薄汚れたような肌の色。吾輩が小さい頃は奴隷たちがあのような肌だった。きっとあの側室も奴隷だったのではないだろうか?つまりは奴隷の息子なのではないのか?ならば吾輩のほうが格上ではないか。たまたま公爵さまが奴隷に手をつけて産ました子なのではないかとずっと疑っていた。無表情だし睨みつけるような目。夜のような真っ黒い髪。呪われてるんじゃないか?とさえ思っておったわ。  だが、公爵家だというので我慢しておった。結婚さえしてしまえば吾輩が公爵家の一員としてあの城も全てに入るはずじゃったのに!クソ!忌々しい。 「ふん!農家のものは皆、吾輩のいう事をよくきいている。これからもきくだろう」  周辺の領主にも賄賂はたくさんばら撒いてある。収穫高から何割かは吾輩の懐に入るようになっているし、農民はほとんど勉学もできないやつばかりだ。吾輩がここは伯爵領だと言うだけで皆信じておった。今更違うとは信じまい。だいたい格が違うのだ。吾輩は産まれながらにしての貴族だ。肌も白いし品格がある。  それにしても、ブルーノの奴め!吾輩に謝れとは!エラそうにしやがって! 「よし!もっとブルーノの奴をこき使おう!あやつの主は吾輩なのだからな!」  がっはっはっは。                      ◇◆◇ 「あの方の。アレーニア様のお子様が今、私の身近にいらっしゃる。ああ、夢ではないだろうか」  アレーニア様の幸せが私の幸せ。アレーニア様の喜びが私の喜び。  なのにどうして私はこんな奴の元で働いているのだろうか?  こいつはどう考えても害にしかならない。排除してしまうのが一番いいだろう。ではどうやって?。 「一番近い場所にいるのが私……。ふむ……」
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