14-2

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「やめとけっ!お前らこそ。強くもないくせに金目当てで押しかけてきたんじゃねえのか?」  奥に座っていた熊のような大男がのっそりと立ち上がった。ぼろぼろの服を着た男は眼光だけは鋭い。 「な、なんだてめえ!」  数人が一斉に飛びかかったが男は素手でやつらを投げ飛ばした。 「おお!凄いな!」   コイツは使えるかもしれない。そうだ、吾輩を守るのはこれぐらい強くなければ。 「くそっ叩き切ってやる!」  飛ばされた一人が逆上し剣を抜き突っ込んできた。それを傍にいたマントを頭からかぶった男が素早く自分の剣で止める。二度三度と打ち合いになって荒くれ者たちは皆倒されてしまった。 「おお。こいつも凄いな!よし!お前達二人を雇おう。集まったほとんどが口先だけの奴らじゃったのか!」 「だから私が申し上げたではありませんか」 「ぐぬぬ。……まあ良いわ。今回はブルーノのいう事が正しかったという事か」  ほかにも数人強そうなものがいた。まあこのくらいでいいだろう。金が減るのももったいないし。そうだ! 「よし!お前達には良いものをやろう!この先戦争になった時に吾輩を守り切った奴には吾輩の娘を褒美にやることにしようぞ!」 「っ!何をっ……!それはお嬢様も承知されてるのですか?」  マントの男が口を出してきた。ふん。口約束に承知も何も必要ないわ。 「吾輩の娘だ。父親のいう事を聞くのがあたりまえだろう」 「……お前というやつは……」 「……よせ」  マントの男を熊のような男が制した。なんだ?何を怒っておるのだ?褒美が足らないというのか? 「ほ、褒美が足りぬというなら金貨も用意しよう!どうじゃ!」 「はっ。ありがたき幸せ。その時は伯爵様をお守りいたします!」  熊のような大男が頭を下げる。ふむふむ。これでいいぞ。 「…………はい。」  マントの男も頭を下げる。どうやらこいつは娘より金貨のほうがいいらしいな。まあ仕方あるまい。 「ところでノワール様。戦になるというなら武器も用意しないといけないのでは?」  ブルーノめ。この吾輩がこの期に及んで用意してないわけないだろうが。 「ふっふっふ。問題ないわ。数年かけてちゃんと用意はしてあるわい」 「それはすごいですね。さすがはノワール様。やはりこの屋敷のどこかに隠されてるのでしょうか?」 「なっ何故知っておるのじゃ!」 「そりゃ、月に一度。こそこそされていたら誰だって何かあるんだろうなと思うでしょうよ」 「ふん。めざといな、お前は。そうじゃ、吾輩だけが知っている隠し場所があるのじゃ」 「なるほど……」 「良ければ俺たちにその武器を見せてもらいたい。ほら、使い方が分からないといざと云う時に困るだろう?」  熊男のいうことももっともだが。 「いや。それには及ばん。戦になるまでは誰にも教えるわけにはいかん」 「さようでございますか。了解しました。それで、次のご指示は?」 「そうじゃな。まずは……」
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