17-2

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「来るな!こっちには銃があるんだぞ!」  別の男が傍に居る男たちに銃を渡し始める。 「だが弾丸はない!」  僕の声に銃を手にした男が驚く。 「はん!こっちには弾丸の箱が……中身は石だとぉ?」 「私めがすり替えておきました」  ブルーノがすっと脇から短刀を飛ばす。ワァオ!ブルーノってナイフ投げの達人だったりするの? 「凄いっ!」  すると今度は僕の手に剣を握らせる。早業だぁ!ブルーノって手品も出来るのかも? 「昔、アレーニア様と二人で追手を倒したことがありまして……」  正面から突っ込んでくる敵に今度は蹴りをくらわす。 「あの時のアレーニア様と貴方は本当に瓜二つです」  横から来る敵に僕が斬り込む。 「こんな風に?」 「ええ!まさしくそのとおり!」 「アル!俺以外の男と絡むな!」 「ひゃい!ご、ごめんっ……なさい!」  サミュエルが鬼面のまま素早くこちらに戻ってくる。ガッと頭を掴まれ噛みつくようなキスをされた。ついでに顔をゴシゴシとふかれ化粧も落とされてしまう。 「中にいるとわかった時の俺の気持ちがわかるか!」 「ぅっ……はい」  周りはほとんど倒されていた。何でも屋と呼ばれた男は縄で縛られている。 「サミュエル様。そのぐらいで。それにアルベルト様のおかげにこいつら結構ぺらぺら喋ってくれたし」 「ヴァイス。アルはそんな危ないことをしていたのか?」 「おわっと。あ~、そのなんだな。きっと女性だと思って気を抜いて話したんだと思うんだ。男に話しかけられた方が警戒したんじゃねえのかなぁ?」  今までヴァイスはノワールの傭兵に扮していたのだ。こんなに大きな体なのに綺麗に存在感を消していた。本当に強い男って違うんだと思った。でももう一人気になる人がいるんだな。  マントをかぶった男がノワールに手を貸し抱き起こしていた。 「うむ。よくやったぞ!おぬしには褒美をやろ……ぶぎゃ」  マントの男がノワールの頬をぶん殴った。 「この!馬鹿者めが!お前という奴は!この!」  もう片方の頬まで思いっきりぶん殴る!勢いでマントがズレ、顔があらわになった。 「あのときの老兵?」 「あの人はノワールの父親だ」  サミュエルが僕の耳元で囁く。どきどきするじゃん。でもあの時新領主に会いたいって感じだったのは、やはり残した家族が気がかりで戻って来たって事なのじゃないのだろうか? 「え?じゃあ、この家の主?」 「いや、家督はすでに息子に譲ってこの家を去っていたのだ」 「ち、父上なのですか?」  ノワールが瞠目している。両頬が腫れてハムスターのような顔になっていた。 「この地が狙われてると聞いて戻ってみればなんとも情けない事か」 「それは……だが吾輩を捨てた貴方に言われたくないわ!」 「……それについては悪かったと思っている。だが、領民を守り領地を護るのが領主の務めだぞ!」 「吾輩なりに守ってきたわ!それに自分の領地だ、好きにして何が悪いのだ!」 「それが思い上がりだというのだ!傲慢すぎる!」 「そこまでだ。ノワール伯爵。お前には王都から沙汰が降りるまでこの地で幽閉となる」  サミュエルの言葉にノワールが驚く。 「な!何故吾輩が幽閉されなくてはならない!」 「それだけの事をしようとしたではないか!」 「こ、これは……そうだ。そいつらにそそのかされたのだ。主犯は平民だ!貴族の吾輩ではないぞ!」 「貴様あ!この期に及んで!」  老兵が剣を抜いてノワールに向けた。 「ひぃいいっ」  ノワールはその場で腰を抜かしてしまった。 「だめだ!切ってはいけない!ノワールは自分の罪をあがなわなくちゃいけない」  僕は必死で止めた。だって息子じゃないか。手にかけるなんて悲しすぎる。 「しかし、こやつは性根が腐っておる!」 「なら更生させてあげてよ。アンジェリカが悲しむよ?」 「……わかりました」
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