RisingStar掲載記念。番外編。3-1ベッドを買いに行こう

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RisingStar掲載記念。番外編。3-1ベッドを買いに行こう

 王都に到着し騎士団の団長と初めて顔合わせをする。僕も団員達も緊張気味だ。 「辺境支部団長サミュエル・ブラッドリー王都に帰還しました。これなるは我が団員達。本日は顔合わせのため同行いたしました」 「よく来たな!サミュエル、堅苦しい挨拶は抜きだ!待っていたぞ!」  団長は筋肉隆々で眉毛の太い豪快な方だった。サミュエルの肩をバンバン叩きながら大声で話しをされている。上司になるんだよね?騎士団の中では基本、爵位よりは上官と部下の関係性の方が重要となる。まあ王都は貴族が多いから何かとそういうとこ大変らしいけど。  サミュエルが作ろうとしている辺境支部の騎士団員たちには身分関係なく実力で上下関係を築いていきたい。僕らが連れてきた団員達のほとんどは平民だ。だって元はブラッドリー家が雇っていた自警団だったんだもの。 「きちんと役目を果たして活躍したものの中から子爵や伯爵の位をたまわる者もいる。忠義を見せてくれ。我らと共にこの国を守って行こう!」 「「「「おー!!」」」」  団長の言葉に皆やる気満々だ。今回は顔合わせだけなんだけどな。さすがは団長、団員の士気をあげるのが上手い。  支部の団員達は今日は王都の団員たちと稽古や訓練を共にしてそのまま騎士団の宿舎に泊まらせてもらうらしい。 「はじめまして。騎士団長のフランシスです」  僕は団員ではないので離れた場所から皆の姿を見ていたのだけど団長さんに見つかってしまった。まじかで見るとくっきり二重ですごく暑苦しそうな……いやいや濃いめのお顔。でも強いのはわかる。まったく隙がない。 「はじめまして。アルベルトです」 「サミュエルからいつもお話は伺ってますが、なるほど聞きしに勝る美貌ですな。はははは!」  なになに?サミュエルったら僕の話を団長にしてたって言うの?何を言ったのさ。変な事言ってないよね?焦っちゃうよ。 「団長はお世辞が上手ですね」 「お世辞ではありませんよ。それに腕が立ちそうだ。サミュエルが夢中になるのもよくわかる」  団長が僕の傍に近寄ろうとした時、サミュエルがさっと僕の肩を抱いた。 「そろそろ失礼しよう。すみませんがこの後、公爵家にも顔を出さないといけないので」 「おっとそうだったな。夜には戻ってこいよ。歓迎パーティーを用意しているんだ」 「ありがとうございます。遅くなるようでしたら伝令を飛ばします」 「ああ。……サム、やきもち焼は嫌われるぞ」 「団長、うるさいですよ!」 「はははははっはははは!」 ◇◆◇  待ち合わせ場所は公爵家ではなかった。騎士団から少し離れた高台の屋敷に僕たちは呼びだされたのだった。 「お帰り。サミュエル。アルベルト。初凱旋おめでとう。これはわしからの祝いだ」 「父上祝いとは?」 「王都の別邸を用意した」 「え?本当ですか?」  うそっ。義父さま凄い!このお屋敷を用意してくれたの?祝いって事はくれるって事? 「……いづれは購入予定でした」  あれ?サミュエルは自分で買いたかったのかな? 「ふふ。お前の事だからわしの手を借りずに自分の力で屋敷の一軒くらい買いたかったのだろう。まあ実力がついたら買い替えるがよい。だが、これから頻繁に行き来するのだ。少しでも早く王都に屋敷が必要じゃろ?」 「はい!ありがとうございます!」 「…………ありがとうございます」  屋敷は二階建てで庭もある。客間に台所、リビング。部屋数も多い。元々は貴族の老夫婦の別宅だったそう。今は領地でのんびり暮らしているのだという。家具のほとんどは作り付けで大事に使われているようだった。 「お前にはもっと色々と働いてもらわないといけないからな」  義父の言葉がちょっと怖いな。だが僕に片目をウインクするあたりはお茶目なおじ様に見えるんだけど。 「はあ、わかっております」  サミュエルがため息混じりに答えた。
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