夢か現か

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露木君の事は嫌いじゃない。でも、だからと言って、推しのNaoと二人暮らしだなんて、ハードルが高すぎる。 「あ~、どうしよう。俺、心臓持つのかな……」 顔を洗って、身支度を整えた俺は、恐る恐る扉を開けた。 途端に香って来る美味しそうな匂い。 キッチンで手際よく料理をする露木君の後ろ姿。よく見たらやっぱりNaoだ。 Naoと露木君が半分ずつ混ざったような不思議な感覚。 「いい匂い」 思わずそう呟くと、振り返った露木君が小さく笑った。 「もう出来るから、座って待ってろ」 「う、うん」 言われるがままテーブルに着席して、キッチンで料理する姿をぼんやり眺める。 なんか……。こうしてると、本当にNaoと一緒に暮らしてるみたいだ。 「椎名」 「は、はい!」 不意に呼ばれて、思わず変な声が出た。 「フッ。そんなに緊張しなくても取って食ったりしないから」 学校での印象と随分違う。学校では笑ったところなんて一度も見たことないし、こんなに話しているのも珍しい。 直接聞いてみようか? いや、でも。そんな事したら俺がリスナーだとバレてしまう。それはそれで恥ずかしいし、もしも違って、どんな番組なんだ? って聞かれたりしたら俺は答えられない。 悶々としている俺をよそに、テーブルの上には美味しそうなフレンチトーストとミニサラダ、ベーコンエッグなどの料理が次々と並べられていく。 「食っていいぞ」 「うん。ありがと」 向かい合わせて座って、手を合わせる。 「「いただきます」」 誰かと向かい合って朝ご飯を食べるなんて何年振りだろう。元々父さんは仕事ばかりで、ほとんど一緒に食事なんてしたことが無かった。 母さんは病気がちでずっと床に臥せっていたから、それこそもう10年位は一緒に食事をしていない。 「ん、んまいっ!」 露木君の作ったフレンチトーストは、外はカリッと中はフワフワで、メープルシロップがたっぷりかかっていてとても美味しい。ベーコンエッグも半熟で、俺の好みドンピシャすぎる。
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