夢か現か

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「やば。ほっぺた落ちる」 「大袈裟」 「んな事ないって! 今まで食べたどの食べ物よりも美味いよ!」 次々と口に入れて、幸せを噛みしめながら思わず力説するとハトが豆鉄砲喰らったような顔をした後、露木君はふいっと視線を逸らした。 あ、今、もしかして照れてる? ちょっと可愛いかも。 なんて思っていると、露木君は自分の前髪をぐっと引っ張って顔を隠した。そして、そのままその手で無造作に口元を隠す。 「……そんなに美味そうに食って貰えるなら、また作る」 「え? で、でも……迷惑じゃないか? 無理は……」 「俺が作りたいんだ」 顔を半分隠しててもわかる。ちょっと口の端が上がってる。 「あ、ありがと」 なんか、すっごく嬉しいかも。 相手がNaoじゃなかったとしても、そんな事言われたら、嬉しいに決まってる。 「……なんだその顔」 「え?」 「ガキだな。お前」 スッと伸びてきた手が、俺の口元に伸びて来て、口の端を拭った。 「え? な?」 露木君の長い指先が俺の口元に付いたメープルシロップを拭い、それをそのままペロリと舐めた。 「ガキ」 「っ!?」 その仕草が妙に色っぽくてNaoに言われたような錯覚を起こして、思わず心臓が大きく跳ねる。 「あ、あ……。あの、俺っ、ごちそうさまっ!!」 残ったフレンチトーストを全て頬張って、俺は慌てて席を立つと、転げるように空になった食器を持ってキッチンへと駆け込んだ。 なにあれ!? なにあれ!? なんかもう、行動がヤバくない?  さっきの! 前にシチュエーションボイスで見た事あるやつ!!  「は、反則だろ……。あんなの」 心臓バクバクで、俺、死ぬかも。食器を水に浸けながら、俺は大きく息を吐いた。
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