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露木君はエスパーか何かだろうか? 俺の心を読むのが実に上手い。顔に出やすいなんて今まで一度だって言われた事ないのに。
でも。
「そっか、デートじゃなかったんだ……」
俺はポツリと呟くと、ふうっと大きく息を吐いた。
別に露木君が誰とデートをしてたって、俺には関係の無い事なんだけど。それでも、思いっきりホッとしてたりする自分が居るのも事実なわけで。
俺はその感情が一体何なのか、頭を悩ませる。Naoの事は前々から好きだけど、それは推しだからで、恋愛的な意味合いじゃなかった筈だ。
じゃあ、この露木君に感じるモヤモヤの正体は一体なんなんだろう?
ソファに寝転がりながらため息を一つ。
「あー、もう。わけわかんないし」
独り言ちたタイミングで鳴った通知音に俺はびくりと身体を揺らす。
ポップアップを開けば、Naoが投稿を再開したという通知が目に飛び込んで来る。
しかも、生!?
「えっ!? あ……っ」
直ぐに部屋に籠ったのは、もしかしなくても設定とか色々する為だったのかな?
大急ぎでパソコンを開き、Naoのページを開いてみる。
『謝罪』と言うタイトルの文字を見て、俺は思わず息を飲んだ。
ヘッドフォンを装着し、ドキドキしながら動画を再生する。
そこに映っているのは、やっぱり露木君だ。いつもの背景じゃなくて、明らかに俺の家の内装が映っている。
『皆さん、ご心配おかけして本当にごめんなさい。数日前に家が火事になって、撮り溜めていたデータが全て消えていたんだ。今は、心優しい友人の家にお世話になっていて――』
「……っ」
あぁ、やっぱいい声。コメント欄には配信の再開を喜ぶ女の子たちの声で溢れている。
『……でも、またこうして皆さんに僕の声を届ける事が出来るようになって本当によかった。これからも応援よろしくお願いします』
そう言って、画面の中の露木君が微笑む。その笑顔が、俺の心臓を鷲掴みにして激しく揺さぶった。
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