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「あれ? 椎名。まだ起きてたんだ」
「は、はひっ! 」
突然ガチャリと音がして、配信を終えたらしい露木君が部屋から出て来た。
俺は、ノートパソコンをばたんと勢いよく閉じて、素っ頓狂な声を上げる。
「……そんなに驚かなくても……。あ! わかった。……ひょっとしてさぁ」
あたふたと挙動不審な俺を見た露木君が、意地の悪い笑みを浮かべたのが見えたけど、俺は今それどころじゃない。
だって、俺の心臓は今にも口から飛び出しそうだし、顔なんて火が出そうなほど熱い。
「椎名、今、エッチな動画見てただろ」
「エッ、はっ!?」
「違う? だって、わざわざヘッドフォンまで準備してさ、怪しいなぁ。何見てたの?」
「な、ななっ、なにも見てないし!」
俺は慌てて首を左右に振った。でも、そんな俺の反応は、露木君にとって肯定の証でしかないらしく、彼は俺のすぐ傍まで歩み寄って来た。
「ふぅん? 別に隠さなくてもいいのに。……椎名はどんなのが好みなわけ? 気になるなぁ」
「!!!」
そう言って、至近距離で俺の顔を覗き込んでくる露木君と視線が合って、心臓が一瞬止まった気がした。
気になるって言われたって、見せられるわけがない。だって、ついさっきまで見ていた動画は……。
「し、知らない! 俺もう寝るから!」
俺はあわあわと慌ててノートパソコンを小脇に抱えて立ち上がった。
「あ、ちょっ、椎名」
「おやすみっ」
何か言いたげな露木君を振り切って、俺は自分の部屋へ逃げ込んだ。
バタンと大きな音を立てて扉を閉め、そのままズルズルと床へ座り込む。
「はぁぁぁ……」
俺は大きくため息を吐いた。
まだ心臓がバクバクしてるし、顔も熱いままだ。
「……色々、マジか……」
明日から、どんな顔して露木君と向き合えばいいんだろう?考えれば考える程、頭の中がこんがらがっていく。
こんなの俺のキャパを軽く超えてる! 取り敢えず今日は寝よう!! 俺はベッドの上にノートパソコンを放り投げ、スウェットに着替えていそいそとベッドに入る。そして、頭まですっぽり布団を被り、固く目を閉じた。
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