苦手な男

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「環、アイツとあんま関わんねぇ方がいいぞ。お前お人好しだからすーぐ騙されそうだし」 「おいおい、そんな言い方ないだろ。露木君だって一応クラスメイトなんだし」 「そうかぁ? だって、アイツ誰とも喋らないじゃん。喋ってる所見た事ないぞ」 「うん……まぁ、それはそうだけど……」 確かに、そうなのだ。正直言って俺も彼は苦手な分類に入る。俺も人と話すのはそんなに得意ではないけれど、露木君はそれの比じゃない。 彼は常にグレーのマスクをしている為、表情が読み取りにくい。その上、いつも一人で本を読んでいて、話しかけるなオーラがヤバくて見えない壁がそびえ立っているような、そんな感じ。 でも、だからと言って彼を避けたり、嫌ったりする理由は無い。 「俺達も行こうぜ。って言うか、環が思ったよりも元気そうで安心したわ」 「あ、うん」 篠田に促されて俺は下駄箱から靴を取り出そうとして、ふと違和感に気付く。 ――俺、篠田にフラれた事言ったっけ? 確か誰にも言ってない筈だ。俺と沙希が付き合っている事は篠田にだけは伝えていたけど、他の奴らは誰も知らない。 もしかして、紗季が話したのだろうか? いや、でも……彼女とはクラスも違うし 接点なんて無いはずだ。 「環、どうした? 早く来いよ」 「……いや、なんでもない」 まぁいいか。さっきの言葉がフラれた事に対しての言葉じゃない可能性だってあるし。 きっと俺の考え過ぎだろう。そう結論付けて、靴を履き替えると少し先を行く篠田の後を追った。
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