苦手な男

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「え、今日?」 「そうそう。クラスの皆でさ、2組も誘って合同でカラオケ行こうって」 昼休み、弁当を食べ終わってスマホをいじっていると篠田にそう声を掛けられた。 正直言って今はカラオケでワイワイやるような精神状態じゃない。それに、2組には紗季もいる。 「俺はやめ……」 「ちゃんと来いよ! 約束だからな!」 「えっ、ちょぉ!」 篠田は俺の話なんて聞く耳持たず、言いたい事だけ言って席を立った。 俺は慌てて後を追い掛けようとしたが、もう既に彼の姿は無く、何処かへと行ってしまった後だった。 「どうしよ……」 正直、今はあまり人と関わりたくない。特に紗季と会うのは気まずい。 だからと言って、行かなかったら後で何か言われそうだ。面倒な付き合いは出来れば避けたいところだけど、ここで断ったら余計に面倒な事になりそうだし…… 「はぁ、しょうがないか」 俺は一人でため息を吐いて席に戻ると、机の上に突っ伏して瞼を閉じた。でも、何だか頭上に人の気配を感じてすぐに目を開けた。 目の前に、高い壁。じゃなくて! 露木君が俺の事見下ろしてんのは、なんでだろう? 「な、なに?」 「……別に」 相変わらず表情が読めない。冷たい眼鏡のフレームを押し上げると、彼は小さくため息を零した。 え、なに? 俺、何かした? いや、何もしてない。した記憶が無い。 なんでかわからないけどめっちゃ不機嫌そうだ。てか、怖いんですけど。やっぱり俺って彼に嫌われているのだろうか? 「これ」 「……え?」 不安に駆られていると、露木はぼそりと低い声で、俺に何かを押し付けてきた。 「今日、2組でカラオケ行くんだろ。それやる」 「え、あ……うん」 俺は訳も分からず押し付けられた数枚の紙きれは、学校近くにある行きつけのカラオケ店の割引チケットだった。しかも、よく見たら株主優待券と書いてある。
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