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次の日、天気予報通り朝は雨が降っていた。昨日に比べれば幾分か雨足は弱まっている。この調子なら午後は晴れるだろう。
あまりに興奮して学校に行くよりも早く目が覚めてしまった。そうなると時間が経つのが遅く感じる。
今日のために廃校になった小学校の校庭をクワやスコップで掘っておいた。できるだけ広い方がいいと思い、校庭いっぱいをおよそ3cm程度掘り、水が捌けてしまっては困るので粘土質の土を塗った。どれだけの労力をかけただろう。手のひらには何度も潰れたマメが沢山ある。爪が黒ずんでいるが今では勲章だ。
午後はやはり太陽が顔を出したが、一部にはまだ厚い雲が残っている。空には虹がかかっていて風はない。
佳樹は廃校の校庭にいた。昨日からの雨で校庭は薄らと水が溜まっていた。水面は凪で鏡のように空を映し出していた。その上を歩く佳樹の波紋が徐々に広がっていく。
テレビを見ていたら世界遺産の特集をやっていてこの方法を思いついた。七色の空というのがどうしてもわからなかったが、友達と下校しているとき水溜まりに虹が映っているのを見て、これだと確信した。今も空と地に大きな虹がかかっている。
校庭を大きく作っておいて良かった。鏡のような水溜まりがもし小さかったら虹が映っていなかったかもしれない。
あとは金色の光のみだ。
厚い雲が太陽を隠す。途端に暑かった日差しがなくなり、虹の光が弱まった。そのときだった。
雲の切れ間から太陽が差し込んだ。
その光は全てを一つに集約したような強い光柱となり、校庭を照らした。水面はその金色の光を反射させ、その光はみるみる広がっていき、あっという間に校庭いっぱいを満たした。
その光景に佳樹は言葉を失った。
あの言葉通りだ。あの言葉通りの現象が今起こっている。金色の絨毯の上に立っているような錯覚に陥った。地面から、いやっ、金色の絨毯からエネルギーを感じ、空から繋がる光柱からは一段と強いエネルギーを感じた。そこに向かって自然と歩みを進めた。その感覚は光に導かれるようだった。
佳樹の興奮は最高潮に達した。
十七歳の大冒険が始まる。
手招くように光柱が徐々に広がっていく。その光の柱に飛び込むように佳樹は大きくジャンプした。
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