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「えぇ……明日から夏休みになります。君たち2年生にとってこの夏休みは大変重要です。いかに過ごすかが大学受験を左右すると言っても過言ではありません。ただダラダラと過ごすのではなく……」
担任の口上は既に佳樹の耳には届いていなかった。教室から眺める空からは大粒の雨が降り注いでいた。天気予報では明日の午後は晴れるらしい。そろそろ梅雨が開けるだろう。
「ではよい夏休みを」
どうやら担任の話が終わったようだ。一斉に椅子が床と擦れる音がしたと同時に、浮き足立った生徒達の声がする。
佳樹もワクワクが止まらない。
自宅の裏の古い蔵を掃除しているときに見つけた一枚の紙。茶色く薄汚れた紙には『 十ト七ツノコロ 地ニ映リシ七色ノ空ガ金色ノ光ヲ放ツトキ 世界ヘノトビラ開ケリ』と書かれていた。ここから連想させられるのはただ一つ。十七歳で条件が揃えばどこかの世界へ通じる扉が開くということだ。
佳樹は友達との挨拶を早々に済ませ、足早に学校を後にした。
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