思い出磨き

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彼らの夏が終わった時、梅雨はまだ明けていなかった。    小雨が降り始めた昼過ぎ、大学のベンチに座って時間潰しに外を見ていると、ふと去年の夏を思い出した。  高校の3年間を野球部に捧げ、マネージャーとして支え続けた日々  最初は漫画やアニメに憧れて単純な気持ちでなったんだっけ  お父さんが見てた野球中継、隣で見始めたのはいつからだろう    誰かがすぐ忘れ物するからいつの間にか覚えたみんなの持ち物  朝練前のあいつらの顔  授業中寝てるあいつの顔  試合に勝った時のみんなの顔    そして試合に負けて引退が決まった時の顔。もう朝練しなくていいのに、監督に怒られることもないのに、走らなくてもいいのに、それでも全力でやってきたからこその悔しさが溢れた表情。  マネージャーなんか辞めたいと思ったことなんか何度もあったし、他の子が遊びに行ってるのが羨ましくて不機嫌になったこともあった。  でも思い出は不思議なもので、もし次があるなら多分私は、またあいつらのマネージャーになってると思う。  それくらい充実した日々を送ってたんだなと今になって思う。  この思い出は来年の夏どんなふうに思い出すのだろう。  いつの間にか雨は上がりどこからか蝉の声が聞こえてきた。  あーあ、これは練習できるやつじゃん。    天気と地面の濡れ具合を気にする癖はまだ当分抜けそうにない  
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