万華鏡

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「──え?」 消毒液の匂いに囲まれた診察室。30過ぎと見える医師は、ため息混じりに俺に告げた。 「ですから、今の生活を改善されなかったら、あと半年です」 酒と煙草をやめなかったら、あと半年、だと……?俺の命は、人生は、あと半年で終わるって言うのか?このケツの青い若造医師が。 診察が終わってから会計を済ませるのに、どうしてこうも待たされるのか。呼び出されたから行ってやったのに、総合病院というものはいつも横柄だ。 俺、客だぞ?患者だぞ?患者がいなかったら病院って成り立たないだろう?もうちょっと優しくしてくれても良くないか? 病院のエントランスを出て敷地外へと足を早める。煙草が吸いたい。俺の精神安定の為には煙草が必要不可欠だ。その煙草が健康を蝕むなんざ、ちゃんちゃらおかしい。 俺の人生は、酒と煙草が無いとやってられなかった。 いつからだ?酒と煙草に頼ることを格好悪いと思わせる風潮になったのは。 かつてのトレンディドラマ。主人公が煙草吸ってたじゃないか。ビールの一気飲みだってしてたじゃないか。盛り上がるぞ?あれ。 何でもかんでも悪者扱いしてんじゃねぇ。世の中つまんなくなるだろうが。
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