雨上がり、悪戯好き

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雨上がり、悪戯好き

「あ……」 「また降ってきました!」  公園の入口へと戻って来ると、木々の葉に無数の水滴が跳ねる音が鳴り始めた。  その速度はどんどん加速して、僕たちの肌にも無数の水滴がぶつかり始める。 「これも、雨上がりだからだね」 「僕、傘持ってない。走ってとりあえず傘取ってきます!」  立ち止まっている間にどんどん雨は強くなってくる。まだ太陽の光線が雲から漏れているというのに、容赦なく雨粒は肌を濡らしてくる。  走って家に戻ろうと駆け出した瞬間――。 「待って!」 「でも、先輩も濡れてしまいますよ!」 「……あるよ。ここに」  僕の手首を掴んだ先輩。  さっきのこともあってか、心臓の音が全身に響いている。  先輩はもう片方の手で、握っていた傘を僕に見せてきた。 「雨上がりだから起こること。傘はお一人様専用じゃないよ?」  その言葉と視線に、僕の鼓動は加速していく。  ここまで来て断ることは出来ない。後悔する。と覚悟を決め、僕は返事をした。 「お、…………お邪魔します」 「ふふっ、楽しいでしょ?雨の日も」 「こんなに楽しい雨の日は初めてです」  早く早くと僕を急がせた先輩――。  果たして何処までが、"先輩の悪戯"だったのか……。 『僕もそんな雨宮(あめみや)先輩が好きです』  今日、雨が降らなければ、先輩との距離が近くなることはなかっただろう。  僕は初めて、その"悪戯"に感謝をした。  "雨"先輩は、本当に悪戯が好きみたいだ――。 〜おしまい〜
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