恋愛観一新

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恋愛観一新

 鴨川萌黄( かもがわもえぎ )は中学二年生女子。  SNSで流れてくる恋愛リアリティーショーに出てくる男の子にいつも惚れては出てくる女の子の真似でオシャレをする毎日を送っている。  坊主ヘアの男子の友達、角狩你言(かどかりにーいつ )は中国系の坊主ヘアが似合う男子中学生。 「イケメンってそんなにいいか?」  某少年漫画みたいに下心なく人の趣味に質問をするそんな角狩に満更でもない萌黄はどこに彼が住んでいたかとか気にすることもなく面白い男の子だと思って一緒にいた。  ある日、萌黄に女子の友達から情報が入った。 「この学校にデュノスグランプリ入賞者がいるんだって。見に行こう」  デュノスグランプリといえばイケメンが数多く存在しているだけでなく飛び抜けて面白い男子もいてトップイケメンは一人と厳しい世界でしのぎをけずるグランプリじゃないか。  そこの受賞者がいる?  だとしたらみたい、でもコンプラが厳しい現在で顔も名前も出てるはずなのにこの学校にいるのはうわさレベルの男子と会いに行くのは違法みたいで気が引ける。  インフルエンサーも遠い画面の向こうの存在なのにそんな大それたことは出来ないと萌黄は断った。  もしかしたら中学を卒業した後に恋愛リアリティショーに出るかもしれないイケメンが見れないなんて損をしたと思った萌黄。  でも人を大切にする気持ちを失ってまで肉食になる勇気なんて必要ある?  礼儀を守れない、守らないなんて生徒会長でなくても良くない。  だが本音を言えば少しだけ会ってみたかった。  イケメンと過ごす。  結婚とか将来はあとから考えればいいだけ。  それに生々しいし。  とはいえ妄想のし過ぎも現代社会はいつの時代も痛いと言って許してくれない。  でも痛すぎるのは今後の人生に大きく悪い影響を与える。  理性と本能が葛藤するなか萌黄は授業を終えて廊下を歩くと見覚えのある坊主ヘアの男子、角狩が教室で暴れている他の子に身体を見せあっていた。  学ランから見ても高い身長に細い身体でそれほど気にしていなかったが、彼の身体は無駄のない筋肉と腹筋を守るためにそなえられている脂肪がバランスよくついていて銀のネックレスと相性のいい半裸が他の男子生徒を驚かせていた。  暴力を使うこともなくもう一人も筋肉をはりあっているがあまりルックスが良くなくてガリガリで弱そうなのにまるで角狩に勝てると思い込んでいる男子中学生らしさのほえ方をするので野性的なかっこよさを萌黄は感じていた。  こんなことってある!?  別にポリコレとか多様性とかそういうわけじゃない。  イケメンとイケ女達の時代に合わせた高校生の大人っぽさとまだ子供からぬけだせない幼さがささいな気遣いやすれ違いをうむ中で恋愛感情が高まったり、人間性に惹かれていくドラマが海外や景色の良い日本の観光地で行われるのが最高の恋愛と別れだと思っていたのに!  まさか身近な存在だと思っていた角狩が暴力を使わずに肉体美だけで圧倒させている姿をみたら固定概念が崩壊していくじゃないか!  それに相手も貧相な身体だと思わせないどこからあるのか分からない自信に今まで将来の不安で悩みながら立ち向かって疲れていた萌黄の心に日差しが登った瞬間だった。 「あっ」  こちらに気がついた角狩は何事も無かったように着替えを終わらせて次の授業に向かった。 言ってなかったけどクラスは違うのだ。  それから放課後に角狩へ会いに行く。 「恥ずかしいところ見せちまって悪い」  まさかそんなとは謙遜出来ず返事に困っていた萌黄。  何でだろう?  スマホの向こうのイケメンに送っていた熱い思いが角狩へも向かっているような。 「あんなにたくましいんだ。いつも中国人の身体は日本の学ランでナーフされてるなんて笑わせてくれたけど脱げば凄いだなんて」  なんの反応をしているのか分からなさそうな角狩は相変わらず少年漫画の主人公そのものだった。 「今日呼んでんだ。友達を紹介したくて」  そこにはさきほど角狩と貧相な身体で勝負をしていたゴリラ風男子中学生がボサボサの髪で現れた。 「え?女の子いるの?聞いてないよ」 「いるなんて教えたら何されるか分からないからな」  良かった。  角狩は萌黄を女の子として見てくれていた。  ってなんでそんなところでドキッとしているのだろうか?  イケメン達の肉体美にも惚れていたはずなのに角狩の本格的な身体は歳上の男子高校生を超えていた。  もしかしたら角狩も中国武術者としてプライドがあるから萌黄には恋心を悟られないようにしていたとか?  それならいつも通りに過ごすか知らないフリをする?  でも萌黄は角狩にあえて恋愛をしていないようにふるまった。  だが角狩もあれから少し異性を気にしだしていた。  都合よくなくていい。  萌黄は決めた。 「私も中国拳法知りたいからちゃんと勉強する。今度教えてもらってもいいかな? 」  角狩の表情は分からなかったが少し意識されていたのか新しい友が萌黄を触ろうとした時にかばってくれた。 「友達だからってフランクすぎだ。だからサルってからかわれるんだよ」 「わ、わりぃ」  真偽は不明だが萌黄は角狩を大切にする。 その時にそれはそれ、これはこれを覚えた。  今度はちゃんと角狩の手をにぎりたい。  萌黄は新しく増えた男子の友達とも話しながら三人で下校し思いを育てることを考える。
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