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「ねぇちょっと話できる?」  顎から滴る汗をタオルで拭っていたチナツに声をかける。みんな早々に着替えて体育館からいなくなり、絶好のチャンスだと思った。 「あのさ、部活、一緒に辞めない?」  チナツの顔が驚きに満ちる。やがて私の問いかけを咀嚼するように口から「……大会はどうするの?」と言った。  私たちは三年生で最後の大会になる。もう一ヶ月前に迫っていた。 「いいよ。どうせ勝っても仕方ないし」  どうせ私が勝っても誰も喜ばないし、私自身も嬉しいとは思えない。むしろ私が負けたらチームは喜ぶんじゃないだろうか。そんなのは嫌だし、もう孤立するのは嫌だ。こんなにも辛い思いをするなら、いっそのこと辞めた方が楽だと思った。 「悔しくないの……?」  チナツが静かに問いかける。他人事のように見えるその態度に、苛立ちが募る。しかしこう言ってくれる存在に嬉しいと感じている自分もいる。そんな自分が情けない。 「悔しくないよ」  嘘か嘘じゃないかも、もう自分ではわからない。色んな感情がごちゃまぜになって、もう何が正しいのかわからなかった。
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