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「びっくりした、なんだガットか……」  枕の下から見つけた一本の白い糸に驚き、一瞬安堵した。しかしすぐに、それがバドミントンのガットであることに気づくと、胸が締め付けられる。白髪の方がまだよかったと思ったのは、あの日の記憶が蘇るからだ。 『あいつがいなかったら、もっと楽しいのにね』  ドアの外から聞こえてきたチームメンバーの笑い声。ハイタッチする彼女らの姿を外から見ていた屈辱感。  一年前のあの日、すべてが変わってしまった。  ゴトンッ  携帯がベッドから落ちた。重い体を転がして携帯に手を伸ばす。亀裂の入った画面に映る自分の顔は、丸くて醜い。ニキビも増え、自己嫌悪に陥る。散らかった部屋を片付ける気力もなく、どうせやっても無駄だという考えが先行し邪魔をする。  何も興味が湧かない。毎日が学校と家の往復。ベッドに横たわり、天井を見つめるだけで一日が終わる。そんな日々が続いていた。  西日が部屋に差し込む。あの挫折と裏切りから、私はまだ立ち直れていない。今日も何もせずに終わるだろうという予感が胸を締め付ける。「明日は何か変わるかもしれない」という微かな希望が浮かぶが、すぐに消える。結局、今日も何も変わらなかった。  いつになったら私は前に進めるのだろうか。
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