10 祭りの夜

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 10ー3 エリクさんと踊りたいのに!  その雪よりは、少し大きなふわふわしたものは、手のひらで受け止めると冷たくはないがじゅわっと溶けてしまう。  「女神の甘露です!」  デミルさんが両手を伸ばしてそのふわふわした何かを受け止めると口へと流し込む。  ごくん、と飲み込むとデミルさんの体が鈍い光を発した。光は、ごく一瞬ですぐにもとに戻ったが、デミルさんは、顔を輝かせている。  「素晴らしい!体に力が沸いてくる!」  何?  私は、ふわふわと落ちてくるそれに舌を伸ばしてペロッと舐めとった。  口の中に甘いシロップみたいな味が広がって。  そして、私の全身がきらきらと光を放った。それは、一瞬ではなく5分ぐらいの間、輝きが続いた。  私は、自分の手のひらをじっと見つめた。  確かに、力が漲ってくる!  みなもきゃっきゃっと楽しげにふわふわを受け止めては、口に運んでいる。  うん。  毒ではないようだが、あまり食べすぎない方がよさそうだ。だって、なんかカロリーが高そうだし!この世界には、体重計がない。  もしかしたらあるのかもしれないが私は、見た覚えがない。  私がぼんやり見つめていると多くの新郎新婦たちが降ってきたふわふわを受け取りお互いに食べさせていた。  なんか、すごく幸せそうで正直羨ましい。  私もエリクさんに食べさせたい!  そう思ったが、エリクさんは、そんな拾い食い的なことをする人じゃないし!  そう思ったら、なんとルシアさんが!  エリクさんに木の椀で受け止めたふわふわを飲ましている!  まあ、ルシアさんがしたのは木の椀に入ったふわふわの液体をエリクさんに渡しただけだけど。  でも、なんか腹立つ!  そういうことは私も参加できるときにしてよ!  木の椀の中身を飲み干したエリクさんの全身が金色に輝く。  なんとなくだけど、みな、ふわふわを 口にした人は、魔力が高まっているようだ。  幸せそうな人々を前に私は、1人、舌打ちしていた。  私もエリクさんといちゃいちゃしたかったのに!  式がすむと街の中は、そのままお祭り騒ぎとなった。  ご機嫌なデミルさんが私の手をとりどこからか流れてくる音楽にのって躍りだす。  たくさんのカップルたちもその場で踊り出した。  もしかして、と思ったらやっぱり!  エリクさんとルシアさんも踊っている!  私も!  私もエリクさんと踊りたいのに!  だが、なんか妙なテンションになっているデミルさんが離してくれそうにない。  私は、目をうるうるさせながら踊っていたのだった。  
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