10 祭りの夜

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 10ー5 毒殺未遂事件?  「しかし、お元気そうでよかった」  ウルダムさんが私をちらっと見た。  「あんなことがあって、あなたが姿を消されたので我々も心配していたのです」  はい?  あんなこと?  私は、ウルダムさんのことをじっと見つめた。  「あんなこと?」  「あなたは、お忘れでしょうからこんなことをお伝えしていいものか・・」  ウルダムさんが少し躊躇する。だが、このまますませることはできない。  「お伝えしてください!」  私は、何があったのか知りたかった。だって、これから聖女たちに会いに行くのだし、なら、いったい何があって私が記憶を失い、『ヴェータ』沼にくることになったのか知っておきたい。  できれば犯人も知りたいところではある。  でも、ルキエルでさえわからないと言っているんだし期待はできそうにない。  ちらっとエリクさんの方を伺ってからウルダムさんが話し出した。  「実は、我々にもあのとき何があったのかは、よくはわかっていないんです」  ウルダムさんは、私を見つめる。  「ただ、聖女の内の1人であるミア様が・・あなたに毒を盛られたと騒ぎだしたのです」  マジで?  私が毒?  私は、信じられない気持ちで一杯だった。ウルダムさんは、続けた。  「それであなたの立場が苦しいものになったのは事実でした。でも、毒は、そのときは発見できなかった。あなたが毒を盛られたのは、それから数日後のことでした」  毒を盛られたの?  私は、背筋に冷たいものが走るのを感じていた。ウルダムさんは、私の表情をみて一瞬、口を閉ざしたが、すぐに話し出した。  「それは、本来なら即死するような猛毒でしたが、あなたは、守護天使の守りで生き延びた。だが・・あなたは、聖女の神殿から姿を消したのです」  「ルキエルが『ヴェータ』沼に私を転移したんです」  私の言葉をきいてウルダムさんは、複雑そうな表情を浮かべた。  「エリクのもとに行くことをあなたの天使が選択したのでしょう。記憶を失ったあなたがあのまま神殿で自分の身を守ることは難しかった」  それでも、場所は、考えて欲しかった。ほんと地獄に堕とされたのかと思った!  まあ、エリクさんもいたし。他の連中もなんだかんだいってもいい奴らだしな。ルキエルの判断は、正しかったのかも。  
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